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JR北海道問題の根本はなんだったのか?

2018/12/06

JR北海道の問題が公になって2年、そして石勝線火災脱線事故から7年、そして安全管理体制の問題が噴出し「一連の不祥事」の総決算になった大沼駅脱線事故から5年が経ちました。

そもそもこのJR北海道問題は何故起こったんでしょうか?
識者と言われる方がしたり顔で言う「国鉄分割民営化自体に問題があった」とか「JR北海道単独での維持は無理があった」なんて言葉で収斂していいのか?という疑問を以前から思っています。逆に言えば国鉄時代は事故が無かったのか?というと実態は全く逆なわけです。

では、国鉄末期からJR初期にかけて抑えられてきた事故はなぜ2000年代に入ってから増えてきたのか?という話になるわけです。

そもそもJR北海道は毎年300億円から400億円鉄道の赤字があっても維持できるように考慮された経営安定基金の運用益が鍵になる会社でもありますし、実質的な株主は国ですから人事権も含め国に依存した会社でもあります。
何度も貼りますが

JR北海道
鉄道運輸収入・経常損益などの推移
https://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/company/pdf/brochure2018_11_14.pdf


そのなかで「民間」として経営する方法を長く考えていた会社でもあるわけです。ですので、毎年必ず経常利益を出すことを求められていましたし、地域との関係上あまり極端な関連事業にも手を伸ばせなかった実誠もあるわけです。

表を見ればわかるとおり、国鉄時代は鉄道運輸収入より人件費が高いという「絶対に黒字になるわけがない」決算が、極端な人件費と人員削減、そして修繕費削減で黒字化したというわけです。

この「決算上は黒字化した」ことで、JR北海道は安定しているという幻想を抱いたという良い方も出来ます。運賃値上げをしなければならなかった1996年に決算が赤字になった時期にある程度「ヘルプ」を上げていたらどうだったか?そのあと極端な人件費削減と設備投資削減は結局自らの首を絞めることに繋がったわけです。

そのあたりは報道が少なく、しかも報道は恣意的な批判に溢れていたこともあって、一般的な北海道民はJR北海道はダメな会社だ、何もしない会社だ、職員は高給で働かない会社だと繰り返し刷り込まれ、それが未だに多くの人の頭にあるわけです。

現実的には(現実的に廃止が避けられないような路線ですら)「廃止したくない」と経費節減と設備投資は行われていて、その結果の駅無人化なども批判の対象になるという何をやっても批判されるという状況に置かれたわけです。

後になってやたら批判され、現在減速運転を余儀なくされている特急列車の高速化もそれしか「鉄道を選んで貰う道」はないという努力の結果です。新型車両は修繕費の削減につながり、高速化は車両運用の効率化に繋がりますが、当然土台の線路維持などに手間暇を掛ける必要があります。高速化当初は一定のレベルで維持できた設備も、その後修繕費を削られ職員の給与もベアゼロが続く中モチベーションを保つのが難しくなってきたのが噴出したのが事故であろうと認識します。もちろんそれはよくないことです。しかし、高速化ですら「振り子特急は酔う」とか「高速化で車両がつまらなくなった」と意味のわからない批判をすることが北海道では常でした。

高速道路の延伸は続き、これに対抗するには高速化しか道が無かった。そして、批判する方はいつまでも釧路まで6時間もかかるような常態を放置して古い車両がよかったなどと言う「実際に使わない意見」が幅をきかすのです。

本州からの観光客は「車窓に魅力がある」といいながら時間がかかる列車に揺られることを是とはしていないのです。せいぜいノロッコ号等短距離を乗るだけで充分。本来都市間は高速に移動してしまいたいのです。

さて、本州意見の無理解も、北海道民の鉄道へのネガティブイメージ。そして道路整備で車を運転できる人はちょっとやそっと列車が速くても鉄道を利用せず。免許を持たない高齢者は多くがもう列車に乗れるような年齢では無くなりました。そして多くの利用があった高校生の数は既に民営化当時の半分程度の人数しかいません。地域の人口ですら半分になっているような町だらけ。

「鉄道が無くなったら地域が寂れる」の前に鉄道がありながら人口を半分にしたのは鉄道と何が関係があるのだ?との反省は無いわけです。口汚くJR北海道を罵った増毛町はそのJR北海道からの支援金で増毛駅舎の「道の駅」としての機能を実現し観光客数を稼いでいます。今まで立ち寄れる、休憩できる場所すら無かった増毛町が、地元の高校生すら一人も使っていなかった鉄道の廃線費用である「他人の金」で整備した施設を自慢する。これも報道されていない事実です。金の出所は町ではないのですし「地域の足」といいながら一人の高校生も使っていないことを報じた社は皆無です。要は「思い込み」報道なのです。

JR北海道に足りなかったのはイメージ戦略です。気動車形で地方路線でも入っていける観光列車を走らせたのはJR九州よりずっと早く、本来なら地域の協力が得られれば今のJR九州以上の「観光列車会社」になっていたはずです。しかし、観光列車を降りても駅には誰もおらず観光できる場所も無く、歓迎して貰えない。そういう観光列車が多く続きました。これでは観光列車は定着しません。地域との戦略がJR北海道には足りなかったと自治体は批判しますが、現実に走っている観光列車を無視し続けたのもまた地元自治体な訳です。これで「今後は観光列車で路線維持」という自治体の説明をにわかに信じられないのがJRも国も思っているでしょう。

また、マスコミ戦略も足りなかった。広告は定期的に出していたものの、「広告主」としての意見を言わなければなりません。そして手元予算が減れば広告が出せない、広告を出さない会社には叩くというのがマスコミの常です。

JR北海道が見かけの黒字を出すのは国へのパフォーマンスに過ぎませんでした。しかし決算書が公開されているにもかかわらずそれを読み解き解説したマスコミもまた皆無。黒字になっているがこれでは路線維持できないと90年代に書いたマスコミがいれば随分変わっていたでしょうね。

そして、北海道民はその様な状況、鉄道運行がどれほどの人手と経費をかけなければ行えないのか、除雪も線路設備も、駅の清掃に至るまで全てを鉄道会社が金を出して維持しなければならないことすら知らず、「オレは乗らないが鉄道は残せ」もしくは「鉄道なんてどうでもいい」という態度を今は隠しません。JR北海道問題を「問題」として捉えている北海道民は多くは無いでしょう。北海道民の80%は日常的には「公共交通機関」すら使わない人です。

なんどもJR北海道は「日常的な利用者を増やす」ことを求めています。「鉄道は不便で高い」と北海道民は言いますが、本当でしょうか?自分の運転は人件費ではないのか?車の維持費用を移動距離で割ると幾らになるのか?クルマは必ずしも安い交通機関ではないのです。JR北海道問題だけで無くバス・タクシーだけで無くスーパーや公共施設の撤退問題なども含めこれから地方は「住み続けていくことができるのか」という問題が発生します。JR北海道問題はそのうち維持費用が高い鉄道から順番に問題が露呈したというだけでもあります。

しかし、北海道には減ったとはいえまだ500万人以上の人口がいます。購買力は少なくないのです。一人一人が地域を支える自覚があれば一定の地域は撤退を余儀なく(無人地帯になること、住めない地域になること)されますが、地方でも都市部は維持できるはずなのです。

JR北海道が「当社単独では維持することが困難な線区について」という表明は逆には帯広市や旭川市だけでなく、釧路市や名寄市くらいまでは維持できるという表明です。これを北見は?網走は?稚内は?根室は?と維持出来る範囲を増やすにはその地域が本当に鉄道が必要で私たちは使い続けるのだという確固たる意思が必要なわけです。

その意思さえ表明できれば一定の拠出と引き替えに国が一定の補助を行うという表明がだされ、そしてそれを適用することを躊躇されているのはその意思が表明できていないからです。

「JR北海道はクソだ!」と思うのは自由ですし、私もJR北海道にはまだまだ改善すべき点が多いとも思います。しかし、それは金のかかるサービスレベル向上ではすでにありません。その「クソ」を要らないと思うなら今まで通りでいいが、私は「クソ」と思ったって必要な足として道内周回コースくらい維持できないと北海道の鉄道とは言えないと思っています。そして、本当にクソなのか、もう一度頭を整理して、あなたが乗らない理由をもう一度考えてみましょう。その上で本当に鉄道が必要なのか考えてみましょう。

もう一度言いますが、多くの北海道民は「鉄道なんてどうでもいい」のです。それを大変なことが起きているんだと思うなら、認識させるための広報をするのは自治体の役目でしょう。すでにJR北海道は「地域と維持について話し合いたい」わけですから、地域が無視すれば残念でしたで終わるのです。ボールは自治体の手にあるのです。

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