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「話せる券売機」に見るこれからの鉄道営業

2018/12/14

JR北海道は12月12日にこのようなリリース文を公表しました

JR北海道 2018.12.12
不慣れなお客様をオペレーターが遠隔サポート!!
「話せる券売機」の試行導入
https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20181212_KO_Assist%20MARS.pdf


1月7日から券売機にオペレータと会話し、オペレータ側で操作に介入でき、証明書などを要する乗車券等を購入できる機能を加えた新しい券売機を導入すると発表しています。
導入は南千歳駅と千歳駅2階、その後島松駅、北広島駅、そして札幌駅東口と拡大する予定です。

現在も主な駅では指定席券売機が稼働しており、職員を介在すること無く主な乗車券類、指定席券類、そしてえきねっと予約の受け取りや割引企画切符等の購入ができます。しかし、学割証、身障者、通学定期(通学証明書)などの割引証での購入、ジパング倶楽部や大人の休日倶楽部のようなJRの会員制度での割引には対応していません。これらは必ず窓口での係員対応が必要だったわけです。

この券売機の導入背景ですが、まず、駅窓口の混雑対策、そして、駅窓口の将来的な閉鎖、人員削減を考慮していると思われます。他社の導入事例を見てみます。

もしもし券売機Kaeruくん

JR東日本は2005年から比較的小規模の駅において計56駅でこのオペレータ対応型券売機を導入しました。導入駅は出札窓口を廃止し、すべての発券業務を券売機とこの「もしもし券売機」で代替しました。この券売機で一定の指定席券類が購入できるため、窓口廃止駅でも時刻表上は「みどりの窓口」設置駅として案内されました。あくまで窓口閉鎖であり無人化ではありませんでした。

なお、導入は都市部にもおよび、山手線内でも鶯谷・新大久保、中央線の大久保・東中野・千駄ヶ谷・信濃町など比較的利用の多い駅でも窓口を廃止することになったわけです。

「もしもし券売機Kaeruくん」には自分で乗車券類を購入する機能は付けられておらず、必ずオペレータが介在した形で発券業務が行われました。オペレータは駅無人化などで人員に余裕があった盛岡地区で行っていました。

○もしもし券売機Kaeruくんのメリット・デメリット
・基本的にみどりの窓口で購入できる券(イベント券、レンタカー券等を除く)は概ね発券することができた。(指定席券売機では発券できない券も発券できた)
・駅係員の少ない駅で身障者等の対応時でも乗車券類の購入が可能
・オペレータが他駅対応中の待ち時間がかかる(特に新入学時期など)
・営業時間に制約がある(これは窓口営業時間よりも概ね拡大された)
・比較的都市部の駅でも窓口を閉鎖し本機に置き換えられた

このもしもし券売機Kaeruくんは2012年に全て撤去され、多くは指定席券売機に代替されることになりました。しかし、一部の駅は指定席券売機すら設置されず指定席券等の購入ができなくなりました。この券売機導入の背景には職員の定年退職による大量退職があったことと、地方部で地方勤務を希望する一定の職員雇用の両方を解決するという意味があったと思います。しかし、全てをオペレータ対応とするため待ち時間が発生するなどの問題もあり、結果5年程度で稼動を終了しました。

みどりの券売機プラス

JR西日本は2010年から須磨駅などで導入したものです。「もしもし券売機Kaeruくん」との大きな違いはあくまで「指定席券売機」として乗客が直接操作して指定席券等を購入できる機能にオペレータ対応機能をプラスしていたこと。(もしもし券売機Kaeruくんはどのようなきっぷでもオペレータ対応が必要だった)
オペレータの必要がない乗車券類はそのまま購入でき、通学定期(通学証明書)、割引証、寝台券など指定席券売機で購入できない券や操作方法などに詰まった時にオペレータを呼び出し、介在して貰うことで発券できるというものです。

○みどりの券売機プラスのメリット・デメリット
・基本的にみどりの窓口で購入できる券(イベント券、レンタカー券等を除く)は概ね発券することができる。(指定席券売機では発券できない券も発券できる)
・駅係員の少ない駅で身障者等の対応時でも乗車券類の購入が可能
・オペレータが他駅対応中でも基本的な指定席券類の購入は可能(指定席券売機と同一機能)
・ただ、証明書などを必要とする場合はオペレータ対応の待ち時間がかかる(特に新入学時期など)
・営業時間に制約がある(これは窓口営業時間よりも概ね拡大された)
・比較的都市部の駅でも窓口を閉鎖し本機に置き換えられた

大きいのはもしもし券売機Kaeruくんのデメリット部分を対策したところでしょう。指定席券売機は全国的に数を増やしていますので、慣れた人なら窓口に並ぶより早く購入が可能です。ただ、通常設置は1台なので前の人が購入している状態では当然待ち時間が発生するはずです。

JR西日本でも比較的小規模の駅での導入から現在は京都駅のような比較的大きな駅でも設置されており、窓口の混雑対策も兼ねていることが伺えます。また元々みどりの窓口の無かった駅に設置されている例もあります。

サポートつき指定席券売機

JR東海が導入した「集中旅客サービスシステム」導入区間の幸田駅に設置されたもので、指定席券売機機能にオペレータ対応機能がついたものです。機能的にはJR西日本の緑の券売機プラスと同等といっていいでしょう。ただ、幸田駅は導入と同時に無人化しており、従来の駅窓口の代替としての設置ということになります。
この「集中旅客サービスシステム」は域内の無人駅化、券売機のオペレータ対応により清算などにも対応するというものです。サポートつき指定席券売機は同時に近鉄名古屋駅のJR切符売り場にも設置し、この切符売り場を無人化しています。

JR北海道が導入する話せる券売機

今回JR北海道が導入する「話せる券売機」はJR西日本、JR東海のオペレータ呼び出し可能な指定席券売機と同様のものが導入されるものと思われます。指定席券売機は慣れれば窓口より早く切符を購入できるものの、不慣れな客や駅員と問い合わせしながら切符を買うという用途には全く向きません。そんななかで、まず南千歳や千歳の2階窓口に導入するのは比較的利用が少ない窓口であり、なおかつ有人駅であることが大きいものと思います。しかし、窓口対応と改札対応の兼務などかならずしも窓口に職員を配置できないことから発券業務の一部を機械にすることが主眼と思われます。

将来的には駅の窓口を廃止する駅も出てくる可能性は高いかもしれません。特に札幌圏の無人駅や改札が複数あり一人勤務の駅、営業時間の短い駅などで効果を発揮しそうです。

このような券売機を入れなければならない背景

鉄道は多くの人員を必要とする輸送機関です。国鉄時代各駅には複数の駅員を有して、指定席等は電話で指定席センターへの連絡、手書きで発券など時間をかけたものでした。改札も駅員が切符を改札するという必要がありました。
多くの利用者がいる駅はその後近距離きっぷを自動券売機で発売、自動改札機で改札するようになります。これにより駅員の数は大きく減ることになります。しかし、東京のホストコンピュータに接続し発券する指定席券類はどうしても係員の介在が必要でした。JR北海道は民営化前は拠点となる駅にしか設置していなかった「みどりの窓口」を大幅に拡大しました。しかし、列車運行(信号やポイント制御など)の自動化で無人駅が拡大。有人駅も営業時間を短くする対応をせざるを得ず、また、ネット販売の強化できっぷを引き替えることも限られた駅と営業時間で行う必要に迫られたわけです。

ここ数年JR北海道は指定席券売機の導入を進め、その一部は営業時間の短い地方主要駅にも導入するようになりました。これにより窓口営業時間にかかわらず乗車券類を購入できる時間帯を増やすことになります。

今回の「話せる券売機」はそれをさらに一歩進めて、ある一定の出札業務を機器とオペレータによる対応で行おうということでしょう。これにより札幌駅などでの導入は窓口混雑の解消を、中小駅では駅員の業務改善、そして、場合によっては駅無人化の進行、または無人駅での指定席券などの発売も行えるようになるかもしれません。(導入当初はオペレータ勤務時間が8:30-19:00なので無人化や無人駅導入はないと思います)

また、JR東海の「集中旅客サービスシステム」のような無人駅の遠隔監視のようなシステムも導入されていくようにも思います。現在の札幌圏の無人駅は運賃精算もできず、特に夜間無人駅などで不正乗車の横行が見られます。このような状況を改善していくのは一定のシステム導入が必要でしょう。無人駅、時限無人駅の多い学園都市線あたりからこのようなサービスを検討しているのではないでしょうか。

そして、その背景には深刻な人手不足があります。JR北海道は国鉄時代の採用抑制もあり40代の職員が大幅に不足しています。現在50代、60代の職員が退職後は非常に少ない人数で鉄道事業を運営する必要があります。運行を優先すれば駅に人を置きにくくなるわけで、いまから一定の省力化投資が必要になっているというのが背景にありそうです。

いずれにしてもこの「話せる券売機」がうまくいくといいなと思っています。

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