北海道の交通関係

それでもまだ「観光列車」に固執する北海道

2019/01/29
昨年こんな記事が新聞に踊ったのを覚えているだろうか?

 

北海道新聞 2018年02月20日
北海道に観光列車導入を 国、JRの線路開放検討
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/165957
> 国土交通省は20日、JR北海道の管内で、同社以外の鉄道会社などが観光列車を運行できる仕組みを検討すると明らかにした。線路を開放するJR北海道には線路使用料が入るメリットがあり、同社の経営再建を後押しする狙い。2019年度の運行開始を目指す。
>  運行会社は公募で選ぶ方針で、国内の鉄道各社などのほか、海外企業からの応募も想定。海外では、英国の企業がタイなどで運行している事例があるという。  国交省は今後、法制度の見直しや整備の必要性などの検討を18年度中に終えたい考え。

この記事には無いが、首相官邸の「観光推進に関する会議」で外国人観光客の誘客策の一つとして出されたもので、JR北海道側も特に異論は無く、広く海外からも公募し「日本の鉄道事業免許」を取得させるという方針も伝えられました。あまり話題になりませんでしたが、現実に北海道仕様に特化した車両を設計し運行するコスト面との折り合いが難しいだろうなと思う案件でした。

 

日本経済新聞 2019年01月25日
北海道に豪華観光列車 JR北と東急、20年にも
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40476150V20C19A1TJ1000/
>JR北海道が東京急行電鉄と協力し、北海道で豪華観光列車の運行を計画していることが25日分かった。早ければ2020年にも運行を始める。JR北は赤字経営が続いている。富裕層や訪日外国人の需要をつかみ、鉄道の利用増につなげる考えだ。
東急はJR横浜駅と伊豆急下田駅を結ぶ豪華観光列車「ザ・ロイヤルエクスプレス」を17年7月から運行している。北海道で運行するものも同様の高級車両となるもようだ。運行区間の調整を進めている。
運行形態も調整中だが、JR北海道が東急側に線路を貸し出して観光列車を運行してもらう形式を検討している。JR北にとっては新たな収入源となるだけでなく、観光列車の運行ノウハウを他社から学ぶ狙いもある。

ここに来て浮上したのが東京急行電鉄(東急)が観光列車の運行を検討しているというニュースになります。

 

NHK 2019年01月25日
道内で東急の豪華列車運行へ
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20190125/0007334.html
>具体的には、横浜と伊豆半島の間を走る東急の豪華観光列車、「THE ROYAL EXPRESS」を早ければ来年にも道内のJRの路線で運行する計画です。

 

北海道新聞 2019年01月25日
道内で豪華観光列車 五輪に照準 JR北海道、東急電鉄など
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/270048
>  関係者によると、JR東日本と東急電鉄が首都圏などで展開してきた観光列車のノウハウを生かし、新たに製造する豪華車両の運行を検討している。運行区間などは調整中。

実際に新造するのか、(東急系の)伊豆急行とJR東日本で乗り入れを行っている観光列車を使用するのかはともかく、昨年の報道にあった他社の観光列車車両を使用してJR北海道内を走る観光列車が実現することになりそうです。

東急と北海道というと、北海道の各所のバス会社を傘下に入れ、北海道中央バスの買収も検討。北海道を循環するバス路線を構築し、ホテル、観光事業を通じて北海道全体の観光を傘下に収めたいという野望があったはずです。しかし、中央バスの買収には結果的に失敗。1973年の東急百貨店の札幌進出も地元経済界に阻まれ、結果的に「さっぽろ東急百貨店」という別会社にて進出することになります。(その後東急百貨店に統合)
また、札幌の拠点として買収した定山渓鉄道(じょうてつ)は1957年に東急の傘下となります。札幌市内の東急ストアは定鉄商事の運営とし、こちらも直接的な東急ストアの進出では無いとしています。(その後アークスグループに移譲、現在の東光ストア)
また航空会社のJAS(日本エアシステム・現在は日本航空)ニッポンレンタカーも東急傘下であり、関東から北海道へのグループ内だけでの送客、現地収益を上げるという構造ができていたということになります。

その後は北海道経済の衰退と、各地のバス会社を持つ旨みが無くなったこと、そして東急自体もグループのスリム化、リストラ実施を受け、2009年には傘下の宗谷バス、北海道北見バス、斜里バス、網走交通バス株を投資ファンドであるジェイ・ウィル・パートナーズに売却し、東急は地方バス会社を系列として維持する必要性がないと判断したことになります。
現在北海道内の東急グループはバス、不動産業のじょうてつとニッポンレンタカー北海道、そしてホテルグループ、百貨店、ビルサービスなどに留まっています。

今回、東急グループの北海道進出とは特段の関係が無いのかもしれませんが、北海道の線路上を東急の息がかかった車両が走るということは、また特別な感情があったりもします。それほど東急と北海道というのは、軋轢の歴史でもありますし、共存の歴史でもあったわけです。
各メディアによって車両を新調するのか既存車両を使うのか、JR東日本との関係についてもまちまちではありますが、来年度から始めるとすれば車両を新調する余裕は無く、伊豆急行の「THE ROYAL EXPRESS」またはJR東日本の観光用車両を機関車の牽引により北海道内を周遊する形で運行するものと思います。

JR北海道が行う定期運行な観光列車ではなく、他社が行う団体旅行的観光列車ですと、JRの運賃制度を使わずに運賃設定することができます。「THE ROYAL EXPRESS」の横浜-伊豆・伊東1泊2日クルーズは1人13万円~20万円ほどとなり、定員は100名となります。運行距離や宿泊数を考えると北海道を周遊するなら、かなり高額なツアーとして考えているものと思います。そこまでのツアー料金ならJR北海道に運行経費分を支払うことができるというわけです。

元々JR北海道が運行する定期列車タイプの観光列車では普通運賃に指定席料金程度の、1乗車あたり1000円~2000円程度しか徴収できません。これでは車両の改造費も出ませんし、運行経費を運賃で回収できない「赤字運行」となってしまいます。長く運行しているノロッコ号ですら赤字運行と言われています。これでは幾ら観光列車をやったところで収支も改善しませんし、ましては路線を維持することなどできないわけです。

とはいえ、今回のような高額なツアーとしても、本州仕様で北海道内での自走ができない車両を北海道まで運び込み、運行する事に対しての収益は限られるものになります。JR北海道の運賃に縛られる観光列車よりは遙かにマシとは言え、東急側にしても「最初にやったことでの宣伝効果」を考えての採算度外視的な観点ではないかと思われるのです。
電源方式も、運行のための設備も異なる北海道内では自走できない「THE ROYAL EXPRESS」は何らかの機関車で牽引し、何らかの発電エンジンを搭載した電源車両を必要とします。また、客車として走行するにしても定期検査などはJR北海道の車両検修施設で行うことになりますので、その準備も必要となります。

これが「THE ROYAL EXPRESS」なみの車両を北海道向けとして新造し、コンスタントな観光収益を上げていけるかは今回の試みにかかっています。

まだ詳しい状況、車両等はわかりませんが、今回の決定に対しては、本来あり得ないような他社の車両をJR北海道の線路で走らせ、客扱いするということが行われます。準備にも非常に時間がかかるでしょうし、それだけ周囲の期待も大きい。むしろ鉄道会社が本気になればこんなことができるんだということを表明したと言うことです。

某いすみ鉄道前社長が自社の旧型気動車をJR北海道に貸してやる、整備して返せとか言ってるよりよっぽど現実的に、よっぽどサプライズ的に(この両意見は必ずしも相反しない)周りは動いたということです。本気になった鉄道会社は強いなとも思います。

さて、北海道庁が動いた「観光列車」については過去モニターツアーが3回行われていますが、結果については正直何もマスコミ関係から伝わりません。
北海道庁が主催した「観光列車モニターツアー」は
○第1回 大地の恵み体感1泊2日最北への旅路・宗谷本線
【旭川発~稚内~旭川着、片道バス使用】
H29.10.28(土)~29(日)【1泊2日】
※復路バスコースと往路バスコースを販売
(あくまで列車利用は希望した片道だけという企画)
○第2回 道東ハイライト・感動本線ふれあいの旅・2泊3日
【札幌発~帯広~釧路~網走~旭川~札幌着】
H29.11.3(金・祝)~5(日)【2泊3日】
○第3回 氷雪のネイチャーロード 純白冬紀行・釧網本線
【釧路発~網走着、網走発~釧路着】
H30.1.27(土)【釧路発~網走着・日帰り】
H30.1.28(日)【網走発~釧路着・日帰り】
これだけですが、マスコミは梨の礫でした。しかも、終了から1年以上経って、結果についても何も公表されていません。そんなことで「観光列車」未だに抜かしてる北海道庁は本当になにもかも「とりあえず言われたからアリバイ的に予算着けてやりました」だけなわけです。何度も「継続しなければ意味が無い」と言われてもこのザマです。

結局北海道の「官」はこの程度で、本州から何らか考えて金出してやってくれるのを批判するだけの情けない組織ということになります。もう二度と観光列車なんて言わないでいただきたいものです。もう現知事は何も解決せずに逃げ切り成功なのでよかったですね。

カテゴリ: 北海道の交通関係 JR北海道 航空 免許返納 観光列車 観光列車

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