北海道の交通関係

鈴木知事のJR問題対応は?

2019/04/09
北海道知事選挙が終わり、鈴木知事の誕生を踏まえてネット上では様々な意見があります。多く見られたのが「鈴木知事は夕張のように片っ端から鉄道を廃止するのではないか」という意見です。

実際に鈴木知事が鉄道を廃止する方向に進むかはわかりませんが、はっきりしているのは留萌線や日高線など、明らかに鉄道としての意義を失った路線は誰が政治を行ったにしても残すことはできないということです。まして、地域が全く鉄道を使おうという努力も行わず、国が~JRが~と叫んでるだけの状況では残せるわけが無いのです。

これは国鉄末期の北海道知事が革新系の横路氏だったことを考えても、鉄道を残すということを時の知事が手を尽くせばある程度残すことが可能であったのに、結果残せなかったということにも繋がります。結局第三セクター鉄道になろうがJRから上下分離しようが地域がその鉄道を必要としない態度を取る限り残せないのは明かです。

この鉄道不要という考えは、鉄道に関する様々な報道、そして地元が感じている「印象」が非常に悪いことも理由の一つでしょう。新知事に望むことのインタビュー記事では

 

室蘭民報 2019年4月8日
■ 交通網整備、景気回復を…室蘭・有権者の思い
http://www.muromin.co.jp/murominn-web/back/2019/201904/190408.htm
「JRなど地方の交通網は以前よりも不便になったと感じる。しっかりと取り組んでもらいたい」と要望した。

この「感じる」が曲者です。室蘭近郊のJR北海道の路線は増便こそ行われてきていますが、減便はほぼ行われていません。では、不便になったというのはどういう状況なのか?つまりこの方全く鉄道を日常使っていないわけです。印象だけなんですね。

この「印象」を作り続けたのが北海道のマスコミ各社で、JR北海道を叩いておけばどのような記事でもよいという観点なわけです。施策、増便は報じず、減便減便、廃止廃止と報じれば多くの道民は「不便になった(はず)」と思うわけです。実際には地元の列車は国鉄末期から何も変わらず走り続けていてもです。それは実際に北海道民が鉄道を使わない裏返しでもあります。あたりまえかもしれませんが、冬期の列車運休も「動いてるなら報道しない」のですから、止まった止まったとしか報道されないわけです。ひいては「よく止まるJR」という印象付けになります。「○本運休」は地元と全く関係の無い場所で起きていることが多いんですね。

もちろんこれはJR側の広報体制も非常に悪いのも否めません。しかし、どれだけプレスリリースを出しても報道は取り上げないわけですから致し方ないでしょう。現状JR北海道ができる広告は多くなく、駅でどれだけ広報しても多くの北海道民は駅にすら行かないわけです。

知事が誰に替わったところで住民が不要と思う路線は残りませんし、必要というのが「走ってる姿が見えなくなるのは寂しい」では残りません。そんななか、網走市は広報で市民に石北線、釧網線の現状をまとめた広報別紙を配布しました。

 

経済の伝書鳩 2019年04月08日
広報別冊で「鉄路存続に理解を」
https://denshobato.com/BD/N/page.php?id=114291
網走市は特集記事を掲載した冊子を広報誌「広報あばしり」4月号の別冊として全戸配布した。
記事では「年に一度は鉄道を利用する」「列車を見たら手を振ってみる」などと、市民に理解と協力を求めている。 独自支援策など紹介、協力求め 別冊のタイトルは「特集 鉄道を守るために、いま、できる行動を」。
各ページでは、石北本線と釧網本線の特性と現状、維持困難路線についてのJR北海道の考え方、国の動きなどを項目別にして紹介。グラフや地図を多用し、読み手側の市民に配慮した。
冊子では、これまでの取り組みを紹介した上で、鉄道を守るために市民ができる行動として「年に一度は鉄道を利用する」「出張はなるべく鉄道を利用する」「駅の清掃や花を飾るボランティア活動をする」「列車を見たら手を振ってみる」などといった例を挙げて、理解と協力を求めている。

 

網走市
広報あばしり
http://www.city.abashiri.hokkaido.jp/110koho/2019/files/04/bessatsu.pdf

多くの市民はJR北海道がホームページで行っている現状の広報や各種イベント列車、各種割引切符のページすら読まないはずです。実際に使う段階で時刻を確認するのが関の山で多くの市民は鉄道自体を使う機会も無く、鉄道を使ったことが無い市民だって少なくないでしょう。そんな中広報誌としてこのような内容を全戸配布した網走市の本気度が伝わってきます。
中身は
・網走市の取り組み
 -観光利用を増やす取り組み
 釧網線パス・市内宿泊助成・車内販売・観光列車協力等
 -地域住民の利用促進・マイレール意識を醸成する取り組み
 運賃などの助成内容、乗車促進運動支援等
・鉄道を守るためにいま、できる行動を
 「年に1度は鉄道を利用する」
 「出張はなるべく鉄道を利用する」
 「駅の清掃や花を飾るボランティア活動をする」
 「列車を見たら手を振ってみる」
 具体的な例を上げての行動・協力の要請
・石北本線の特性と現状
 JR北海道公開の収支状況、輸送密度の推移グラフ掲載
・釧網線の特性と現状
 JR北海道公開の収支状況、輸送密度の推移グラフ掲載
・JR北海道の考え
・JR北海道の経営改善に向けた国の動き
・網走市の考え方
 人口減少が見込まれる中利用の拡大を図ることは難しい
 地域での生活利用促進に加え、観光を切り口とした利用増加を推進
 「地域自らの積極的な取り組みが無ければ鉄道は廃止になる」との考え
非常によくまとまっており、現状から各立場、取り組みをわかりやすく記載しています。沿線外の方でも再確認できる内容かと思います。

鉄道を守るために「年に1度は鉄道を利用する」は寂しい話ではありますが、現状多くの網走市民は年に1度すら鉄道を使わないわけですから、これに割引切符などの情報があったら満点だったかな。まぁ、それはJRの宣伝の話でもありますが。

極端に言えば、今JR北海道はJR東日本の「えきねっと」の仕掛けで割引切符や旅行商品を売っているのですから、市民にえきねっと登録数を上げてJR側に「利用の意思があることだけでも示そう」という考えもあるかもしれません。これは留萌市が書店の誘致を進めるためにポイントカードメンバーを増やすなどの方法と同様です。現状JR北海道がえきねっと会員の地域毎の数字をもっているかはわかりませんが、えきねっと会員になって、メールでそれなりの割引切符情報、旅行情報が届くことも宣伝の一環になるわけです。なにより多くの住民は「フルムーンパス」も「大人の休日倶楽部」も知らないでしょう。

さて、話は戻って、鈴木知事のJR問題への対応です。

自家用車に比較してどれだけ本数が多くても鉄道やバスなどの公共交通機関は必ず不便です。しかし、その中で鉄道を利用するという気概が無いと鉄道を残すことは決してできないわけです。

鈴木知事は「必要な路線は残す」と言ったわけですから、地元の路線を「必要な路線」に昇華させる必要が各自治体と住民に課せられたわけです。それができない路線は「不要な路線」と判断されるということです。網走のように動き出した沿線と、口ばっかりで何もしていない沿線では結果は変わるということです。もう諦めてるなら構いませんが、残す目はいくらでもあるのに何もしてこない沿線自治体は、それこそ知事が乗り込んで話を付けることになりましょう。高橋知事の札沼線訪問は結果的に道が引導を渡さずに(泥を被らずに)沿線自治体に決めさせたわけですね。多分夕張の例をみるにつけ鈴木知事は泥を被ることを厭わないでしょう。

また、宗谷北線や花咲線を「ロシア国境に繋がる」という意味で残すべきという意見はありましょうが、ろくに物資も運べない「ハリボテ」のような路線を残す意味をそこに見いだすのは無理です。それなら高速道路をきっちり整備しますの方がよほど相手国へのメッセージになるわけですね。
「鉄道を残す」がハリボテを朽ちるに任せて残すことを是とするような意見は私には納得できない。「残す」と決めたなら予算をかけてでも高速化、重軌条化、場合によっては貨物列車が走れる程度の設備を有する程度にはしなければいけません。また、稚内や根室の貧弱な道路網も再整備する必要があります。対ロシアって意味を本当に考えるなら「鉄道を残す」以外のことにも目を向けることが必要でしょう。鉄道を残せば全て丸く収まるわけが無いのです。

カテゴリ: 北海道の交通関係 JR北海道 乗車促進運動 日高線 留萌線 札沼線 釧網線 石北線 観光列車 花咲線 貨物輸送

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