北海道の交通関係

JR北海道の「長期経営ビジョン」関連報道

2019/04/11

JR北海道が発表した「JR北海道グループ長期経営ビジョン」については今日も様々な記事が出ていますので、いくつか紹介してみます。

北海道建設新聞 2019年04月10日
札幌駅前に新タワービル JR北海道が不動産事業を強化
https://e-kensin.net/news/115820.html
老朽化が進む苗穂工場に関して島田修社長は「いろんな観点から移転は難しく、現地で建て替える」と説明。平屋施設が並んでいることから、3階建てに集約するなどし、空いた用地で不動産開発をする考えを示唆した。


長期経営ビジョンに出てこなかった苗穂工場の移転問題について、JR北海道社長から「移転は難し」いという話が出たのは初めてではないかと思います。実際線路用地に近く広大な土地はあまりなく、過去に話が出ていた岩見沢運転所跡地などもそれほど大きい土地では無く、なおかつ札幌までの距離が比較的大きいことから、現地での立て替えを示唆したものと考えられます。また、長く工場用地として使用してきたことから、施設撤去時の土壌改良、無害化なども難しいと踏んだものと思われます。ある程度技術的に問題が無いとしても豊洲市場移転の報道など「なんとなく不安」というだけでいくらでも叩ける内容ですから。
集約化での土地活用は苗穂丘珠通り、東8丁目通り沿いで行われると思いますし、今後車両数の減少が予想される苗穂運転所の集約なども行われるものと考えられます。

北海道新聞 2019年04月10日
札幌市長、JRの長期ビジョンに「実現可能性あるか分からない」
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/295249
JR北海道が公表した「自立経営」を実現する長期経営ビジョンに札幌市など所有の土地の再開発による増収を含んでいることに関し、「中身が詰まっていない段階でどれだけ実現可能性があるか分からない」と疑問を示した。


札幌市長の会見は動画にて一般公開していますので、これを聞いた限りですが、ニュアンス的に「実現可能性あるか分からない」は否定的な観点ではなく、札幌市として再開発事業で民間会社であるJR北海道の収益に結びつくかを判断できないという「分からない」というニュアンスに聞こえます。公共用地での収益活動批判も、本来問題にならない事柄でありますし、JR北海道だから再開発事業で市の土地で儲けるのは問題だという観点なら毎度おなじみの「民業圧迫」的な批判をしたいということですから、北海道新聞の記者は最初からそういう記事を書こうという意味で質問したということになります。

北海道新聞 2019年04月11日
JR北海道利用促進策 効果に不安の声 「自治体に任せ切りなら無責任」
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/295238
佐藤芳治上川町長は「効果が出せるか、不安もある」とし、「プラン実現を自治体に任せ切りにするなら無責任だ」とJRに苦言を呈した。
JRが北海道新幹線の札幌延伸実質初年度の31年度以降に黒字化するとしたことにも危惧の声があり、上川町の佐藤町長は「根拠があいまい。本当に収支が改善するのか」と言った。


佐藤町長くらいしか答えてくれなかったのかもしれませんが、アクションプランは沿線自治体(石北線の場合オホーツク圏活性化期成会石北本線部会と上川地方総合開発期成会)とJR北海道が「計画案を了承」してまとめられたわけです。そのプロセスを佐藤町長は知らないわけがありませんし、知ってて言ってるなら無責任な発言です。
また、収支改善に関しては過去の実績から考えて数字的に大きな問題があるとは思えず、国と自治体の支援策が明記されていないためのものですから、本当に根拠がわからないなら読んでいないのではないかという疑念があります。

北海道新聞 2019年04月11日
JR中長期計画 自民PTに説明
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/295295
道内議員から「北海道新幹線の札幌延伸や快速エアポートの増強などの増収策を着実に進めてほしい」「利便性向上には在来線の特急列車の高速化も検討するべきではないか」などの意見が出たが、国や自治体による支援規模についての具体的な議論はなかったという。


今回の長期経営ビジョンに道内在来線特急の高速化は一切記載がありませんでした。もうJR北海道は在来線高速化は行わないということになります。これは、高速化による減収が想定内(結果的にほとんどない)こと、高速化での車両整備、軌道整備の費用が増収に見合わないと判断したことがありましょう。
そして、現実的に10分20分早くなっても、道内マスコミの非協力、また、早くなったから利用するという利用者が育たなかったという面もあります。車両更新等での多少の高速化はあるでしょうが、劇的な高速化は新幹線までお預けですし、釧路、網走、稚内方面は基本的にそのままとなりそうです。

十勝毎日新聞 2019年04月10日
新得―富良野は「なるべく早くバス転換」 JRがビジョン発表
https://kachimai.jp/article/index.php?no=462485
路線見直し問題では、根室線(新得-富良野間)など輸送密度200人未満の路線は、早期にバス転換を図る考えを改めて示した。


JR北海道の記者会見質疑応答そのものが公開されていませんのでなんとも言えませんが、島田社長が路線区間を区切ってバス転換を明示したとは考えられませんので、この記事タイトルは十勝毎日新聞のミスリードと考えられます。
ただし、当然輸送密度の低い区間を廃線提案しているわけですから早かれ遅かれその形で動くことになりましょう。しかし、JR側からは提案しかできませんので、今後判断するのは沿線と北海道知事になります。

北海道新聞 2019年04月11日
社説)JRの路線問題 知事の姿勢が鍵を握る
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/295256
国鉄改革を主導した国の責任は重い。これまで路線見直し問題への深入りを避けてきた道が先頭に立ち、国の負担をもっと増やすよう主張していくべきだ。
 鈴木次期知事は、北海道新聞のインタビューで「道民の足を守り、物流の観点から必要な鉄路は残す。そのための財源を国に求めることが重要」と述べた。
 この言葉を守り、沿線住民の声にしっかり耳を傾けた上で、国を主体とした新しい鉄路維持の枠組みづくりを働きかけてほしい。


毎度言うが、国鉄改革の枠組みをアップデートしなかったのは問題だとは思うが、基本的な枠組みはこの当時必要だったと考えます。国はJRを完全民営化するという観点で現在も動いています。ある程度無理矢理JR九州を上場したのも含め、今や上場JR会社の株すら国は持っていません。つまり、NTTやJT等と違い一切国が関与しないということを明確にしているわけです。
その枠組みの中で、JR北海道も最終目的は上場ですから、今支援をしても、最後は国が関与しなくなるというのが前提。そんななか、国が全ての路線を助ける形で動くわけが無いのです。
また、交通政策基本法で国と地方自治体の役割分担を明記しているわけですから、国が関与して公共交通を守りますなんていうのは法律上も無いわけです。

なぜ北海道新聞はそういう面を無視して「国の責任」を言い続けるのでしょうか?この法律が問題ならそういう問題提起をしなければなりません。しかし、過去の記事でも法律的枠組みの話すら書かず「国の責任」と言い続けているわけです。これは主筆をはじめとする多くの記者が交通政策基本法どころかJR会社法、JR北海道の会計そのものすらろくに見ず、勉強せずに記事を書いているのではないかという疑念があります。じゃなきゃ、この手の社説毎度書けないでしょ。さすがに恥ずかしくないですかね?

朝日新聞 2019年04月10日
岐路の鉄路)年280億円の支援必要
https://www.asahi.com/articles/CMTW1904100100007.html


意外と頑張ってまとめてあるのが朝日新聞の記事。そして高橋知事のコメントも取っている。高橋知事が「もう私は関係ない」と思ったかは分かりませんが、あなたが早く出せと言った内容を「道議会や沿線自治体に丁寧に説明していただきたい」とは他人事が過ぎます。

北海道の交通関係 JR北海道 北海道新幹線 石北線 車両更新

検索入力:

記事カテゴリ