北海道の交通関係

高齢者の交通事故と高齢バス運転手問題

2019/04/23

ここ数日衝撃的な交通事故が起こっています。無くなられた方のご冥福を祈るとともに、交通事故についてもう一度考えてみたいと思います。

交通事故死傷者数

まず、平成30年の交通事故死者数です。

警察庁
平成30年中の交通事故死者数について
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00130002&tstat=000001032793&cycle=7&year=20180&month=0


年間に交通事故で死亡した方は3,532人となりました。事故後24時間以内の死者数ですので、実際にはもっと多いはずではありましょうが、統計上の交通事故死亡者数は前年よりも162人少なくなりました。

私の子供の頃、昭和末期から平成初期にかけて、交通事故死亡者数は1万人を超えていました。統計上最大だったのが昭和45年(1970年)の16,765人人口10万人あたり16人以上は毎年亡くなっていたという異常な状態でした。

では、事故発生件数はどうでしょうか、昨年の事故件数は43万0345件、最大だった平成16年(2004年)の95万2,720件から半分以下に減っています。

ちなみに自動車(乗用車)の登録台数は昭和45年(1970年)に727万台、平成元年(1989年)に3071万台、そして平成29年(2017年)には6125万台という伸びです。登録台数が増えて、事故が減って、死亡者も減っている。

これは、道路自体の整備状況がよくなり、信号、立体交差などのインフラ面の整いによるものと、自動車自体の安全性の向上、安全装置の充実によるものが多いと思われます。シートベルトやエアバッグなどの搭乗者保護だけでなく、2004年からは歩行者頭部保護基準が設定されボンネットなどの構造など「轢かれた」場合の安全性が向上しているというのもあります。

高齢者の事故は増えているのか?

さて、今回の事故は高齢者が第一当事者として引き起こされた事故でした。ネットでは辛辣な意見として高齢者から免許を取り上げろであったり、高齢者の事故が増えてるのに対策しないのかというような声があります。

では、本当に高齢者の事故が増えているのか?というのを確認してみます。

警視庁
平成29年中の交通事故の発生状況
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/H29zennjiko.pdf


●原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別交通事故件数の推移
という項目です。
平成19年から平成29年までの11年間で年齢層別での事故件数を出しています。事故件数自体は平成19年の78万7000件から44万7000件に大幅に減っています。しかし、25歳未満の若年層事故が半分以下になっていますが、65歳以上の事故は若干減りつつほぼ横ばいの件数を維持しています。85歳以上に至っては事故件数が倍になっています。
高齢者の交通事故と高齢バス運転手問題
ここまでで「高齢者事故は増えてんじゃん!」は単純な考え方です。

高齢者人口は増えており、若年者人口は減っていますから、もう一つの指標が必要です。
●原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり交通事故件数の推移
です。免許保持者10万人あたりの事故件数という指標で出すとどうなのかというものです。
全年齢層ですと平成19年は985件、そして平成29年は544件。事故の件数自体が免許保有者全体でも大幅に減っていることが分かります。
25歳未満の事故件数平成19年1864、平成29年1089。
65歳以上の事故件数平成19年930、平成29年523。
高齢者人口は増えていますが、事故件数自体は若年者も高齢者も減っていて、高齢者の方が事故を起こしていないということがいえるわけです。これは85歳以上でも傾向は変わらず、全年齢の事故件数が減っているものの若年者の事故数はどうしてもおおくなっています。
自動車保険で30代40代50代の事故率が低いために保険料を割り引くなどを行っているのもこの結果によるものです。しかし、70代を越えるとやはり事故件数は多くなりますので、高齢者は若年者より事故件数が少ないから今のままで良いという意味ではありません。
高齢者の交通事故と高齢バス運転手問題

年代別免許保有者数の推移と高齢者バス運転手の話

警視庁
運転免許統計
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/menkyo.html


さて、今や国民的ライセンスである自動車運転免許ですが、平成45年(1970年)に2645万人いたものが、平成2年(1990年)には6091万人、平成30年には8231万人と人口の7割近くの人が運転免許を持っています。1970年は日本の人口が1億人を突破した年ですから、当時は人口の25%程度しか運転免許を持っていなかったわけです。

また、女性ドライバーは現在総免許保有者の45%となっています。1970年が18%ですので、現在も「おばあちゃん」は免許が無く、「おじいちゃん」に乗せられて買い物なんてのを見る意味がわかりますし、鉄道廃線等の議論で出てくる免許を持たない高齢者も国鉄改革当時に比較して現在非常に少ないことが理解できると思います。そりゃローカル線に「おばあちゃん」をあまりみかけないわけです。

さて、平成30年現在運転免許を所持する22.6%は65歳以上、また、路線バスを運転できる大型二種免許を保持する総数が90万人おりますが、そのうち65歳以上が41万人です。重複で取得している可能性があるのですが、タクシーを運転できる中型二種および普通二種に至っては91万人の取得者のうち52万人が65歳以上となっています。

もちろん全ての保持者がバスやタクシーを運転しているわけではないにせよ、あと10年、20年後バスやタクシーを誰が運転しているのか?若年層のバス運転手、タクシー運転手が増えるのか?という大きな問題を抱えていることになります。

これは高齢者の免許返納を進めようとすることに水を差すことにも繋がりかねませんし、今後現行のバス路線やタクシー台数が維持できない場合、免許返納者の移動手段の確保に真剣に取り組まなければならないことを意味しています。

鉄道とバスの人材難

こう書くと、必ず「だから鉄道を廃止してバスにしてもバスドライバーは不足で地域の足が奪われる」なんてことを言われるわけですが、行政が道路の維持管理し運転手と運行管理者、車両整備など「上」部分だけの人員が必要な路線バスに対し、線路を補修し、除雪し、駅や車両基地の維持管理を行い、踏切の管理を行うなど、車両を直接動かす以外の大幅な人員が必要な鉄道を維持するということは、バスの乗務員問題よりも厳しい現実が待っていることになります。

もちろん少子高齢化が進んでおり、また、除雪などを行う大型特殊免許の保持者も高齢化が進み、従事者が減っている現状があります。
しかも、社会全体が若年層の労働力不足の状況でありますので、運輸交通だけに人員を割くこともできません。

先日留萌管内で発生したバスの事故では乗客も70代、運転手も70代というもので、第一当事者では無かったものの、地方バス路線が高齢バス運転手の嘱託などによる運行でなんとか回しているという現状を浮き彫りにしています。

では、この先どうしたものか

現在、高齢者が免許を更新する際は認知機能検査と高齢者講習が義務づけられています。平成22年にはじまったこれらの検査。平成30年には269万人が受講しています。

先ほど年齢層別免許保有者10万人当たり交通事故件数の話を書きましたが「死亡事故」となるとまた違う結果があります。

警察庁
平成29年における交通死亡事故 の特徴等について
https://www.npa.go.jp/toukei/koutuu48/H29siboubunnseki.pdf


年齢層別の死亡事故件数(免許人口10万人当たり)を見ますと、75歳を越えてからの死亡事故件数が大幅に増えることがわかります。特に85歳以上は全年齢層から比較すると非常に多い。
高齢者の交通事故と高齢バス運転手問題
事故件数は減っているけれども、事故を起こした時に死亡事故となりやすい、また、ブレーキとアクセルによる踏み間違い事故のような車両の操作自体の問題での事故が多いわけです。
高齢者の交通事故と高齢バス運転手問題

ここから言えることは、80歳以上の運転者に関しては毎年の免許更新、高齢者講習および認知症検査の義務付け、そして85歳以上の原則免許返納という形にしたいというのが私個人の考えになります。この「原則」については優良運転者免許であることなど、いくつかの条件を定めて、また、運転できる車両を普通車までに限定するなどの対策で90歳までとし、90歳以降は免許を更新しない。(運転させない)という形です。そして段階的に85歳以上の運転はさせないという形に持っていきたい。

これは高齢者人口が増える中で、免許センターのような施設の増強が必要になるために各所で嫌がられる施策とは思うが、今のまま放置できないのも事実ではあります。

そして、その移動手段を守る形では、二種免許の取得支援が必要で、今の各個人が取得しバス会社、タクシー会社が雇用するというスタイルを鉄道のように運輸会社そのものが養成する形にしていかなければなりません。そして、「総合旅客輸送養成施設」として鉄道会社バス会社等が出資した施設をつくり、一貫して、なおかつ免許を取得しようとする者が安心して、費用の負担無く給与を貰いながら養成される形にする必要があると思っています。

そしてその先には鉄道だからバスだからではなく、地域全ての交通機関が一定のルールでの「共同」する形での輸送体系を考えなければならないものとおもっています。もう「競合」できるほど乗客数が無く、特に地方は並行した複数の輸送機関を動かせるほどの人的リソースも維持できないのは見えています。

そして、現在の二種免許の難易度低減や外国人雇用による人材確保は私には道路交通の安全性を犠牲にする愚策と思っていますし、ウーバーなどの「白タク」に関してはルールの確立さえ危うい。そして、大量輸送機関の白ナンバーはどのみち無理ですから、やはり一定のルールに基づいた輸送機関の統合が必要になるのだと思います。

今制度を作って、バスやタクシー鉄道といった枠組みを変えてでも改革しなければ今のままでは全てが共倒れになるのは従事できる免許保有数を見れば明らかです。高齢者運転手の事故問題はそのまま「交通網をどうするのか」とリンクするのです。

北海道の交通関係 路線バス 免許返納

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