北海道の交通関係


北海道の交通関係サイト終了のお知らせ

当サイトは終了することといたしました。本件に関しましては以下をご確認ください。
当サイトは2023年12月末で閉鎖することといたしました


人口減少とサービス水準

2015/03/24

国鉄末期にあれほど鉄道路線を廃止したのは当時の内閣には先見の明があったと言わざるを得ない。もしあの路線たちを温情で残しておいたら国鉄改革なんか全く進まなかっただろうし、本州三社も上場できることはなかっただろう。JR北海道はもっと早くに破綻していただろう。

もちろん鉄道が好きな者として廃止は残念だ。しかし、お客さんが乗っていない鉄道はもっと残念だ。鉄道は走ってなんぼではない、客が乗ってなんぼなんだ。

JR北海道の取り巻く環境は非常に厳しい。一例を挙げてみる。

たとえば国鉄末期の1985年の稚内市の人口は51,854人いた。2000年43,774人、2010年で39,595人と約25%減っている。稚内駅鉄道利用者も2000年段階で1日413人、2012年で212人と大きく落ち込んでいる。これは乗降客数だから半分で見る必要がある。(本来は南稚内駅も見るべきであるが過去の乗降客データが無かった。ちなみに2012年は204人である)

2000年はそれまでの急行が特急に変わり大幅にスピードアップした頃である。夜行列車は2007年に廃止になっているので、その分を差し引いたとしても落ち込みが激しすぎる。なお、2012年データはもちろん2013年の特急運休に関わる乗客減は反映されないので、現在はそれ以上に落ち込んでいると考えるのが自然である。

稚内市域で現在400人程度の乗降と考えると、それを特急6本で割れば1本あたり70人も乗っていないことになる。さらに普通列車を含めれば16本、1本あたり25人である。

通学生に関しては稚内高校の生徒数694人、稚内大谷高校の生徒数224人の計918人(稚内商工高校は2013年閉校で定員240人)に対し
稚内市内の2010年の15-19歳人口が1,705人で高校生を約1,200人と推定(ちなみにこの数は1985年比半分以下である)
ということは、少なくとも各校最寄りの南稚内まで宗谷線を利用する通学生は非常に少ないと言わざるを得ない。
なお、宗谷北線は稚内市の高校が近い南稚内と豊富、美深、名寄への通学列車が設定されているが、いずれもキハ54型1両であり座席を観光客向けにグレードアップし定員も少ない。つまり、通学需要自体も低い。

もちろん具体的な通学定期の発売枚数も、特急列車の利用客数もJR北海道は掌握している。当然自治体にも公開してしかるべきだ。しかし、この情報を外部には公開していない。なお、JR東日本は「http://www.jreast.co.jp/passenger/index.html 」で乗車人員情報を提供している。

自治体はこれほど減っている利用客数に危機感を持たなければならなかったはずだ。宗谷北線は車両走行距離が長距離である上回送も多く、3往復しかない特急に関しては2編成が南稚内で泊まる非常に非効率な運用になっている。JR北海道の体力が限界になったときに真っ先に効率化が図られる可能性が高い状況であると理解する必要がある。

しかも宗谷北線の普通列車にはほぼ並行するバス路線もない。鉄道だけが足となっている。それならば地元の自治体や宗谷振興局はもうすこしJR北海道に支援を考えて良いはずなのだ。

宗谷線に関しては北海道高速鉄道開発が北海道が約半分、それに加え士別市と名寄市が出資して高速化事業が行われた。これにより名寄以南の軌道強化と車両の更新が行われて特急化された。しかし、おこぼれを頂戴した形の稚内市をはじめとする宗谷地域はこれに甘える形となった。
そして、減便や運賃値上げに対してことさらに文句を言う体質は端で見ていて感心できない。

比較的わかりやすい宗谷地域を例に挙げたまでで他意は無いが、他の地域も総じて同じような状況。地元バス会社並みとまでは行かないまでも、もう少しJR北海道に対する、地元を走る鉄道路線に対する振興策を考えられないだろうか。


今JR北海道の問題は、歴代の経営陣が問題を先送りし、同じく道と自治体も問題を先送りした結果が噴出しているだけだ。人口も利用客も目に見えて減っていることがわかっていながら、何の対応も取らず緩慢にローカル線を維持してきたことは反省してもらいたい。

まだはっきりしたサービス低下の話は出ていないものの、宗谷線、石北線は特急も含めた減便の可能性が高い。183系気動車の初期車を後期車で置き換えるには車両数が絶対的に足りない。もし減便を認めないというなら、道と自治体は更新車両を支援する体制くらいは作らなければならないだろう。JR西日本のキハ187あたりもそうだし、自治体直が問題なら、それこそキハ261を製造した北海道高速鉄道開発の再登板も必要かもしれない。これは普通列車用車両も同様だろう。

しかし、それも、文句だけで終わらすならば、この地域に鉄道は存続できないかもしれない。減便がさらなる利用客減少を招き、路線廃止まで行くのも時間の問題であろう。すでに宗谷北線に限らず鉄道として維持するだけの意義のある路線はJR北海道には少なすぎるのだ。

そして利用客たる住民も自分たちの足をどうするのかをもっと広い視点で考える必要がある。広域にバスを走らせることで負担を減らす考えもある。都市間高速バスの一部を地域輸送に利用するという考えもあるだろう。

鉄道は線路維持も車両維持も鉄道会社の負担で自治体は何の負担もないのだ、つまり地域の輸送について地元自治体は何の負担もしてこなかったことに問題があるのだ。バスになった場合は幹線道路の整備費用は自治体が負担しないが車両やバス会社への赤字補助は自治体の負担になる。だからこそ鉄道を廃止することに反対するのだが、これは大きな問題があるのだ。その負担は結局都市部の利用者と、何の関係もないJR本州各社(経営安定基金の運用益は本州三社の新幹線リース料等で間接的に)が負担している。

もう従来の枠組みでやっていけないほど北海道の町村部の人口減少と公共交通機関の利用客減少は待ったなしの状況。

マニアの皆様も鉄道を廃止するな古い車両を残せというでなく、鉄路を維持するにはどのような方策があるのか考えることが必要だろう。少なくとも道や自治体の交通関連担当者よりあなた方の方が全国の好例を知っているはずだ。それを提案するのも無意味なことではない。


参考:国土数値情報 駅別乗降客数データ
http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/gml/datalist/KsjTmplt-S12.html
参考:稚内市中心市街地活性化基本計画
https://www.city.wakkanai.hokkaido.jp/files/00002800/00002879/cyuukatu-zenpen.pdf
参考:宗谷総合振興局人口・世帯数の推移
http://www.souya.pref.hokkaido.lg.jp/ts/tss/toukei.htm
参考:北海道教育委員会平成26年度北海道学校一覧
http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/ksk/chosa/gakkou-i/2014gakkou-i.htm

北海道の交通関係 JR北海道 人口減少

検索入力:

記事カテゴリ