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北海道の交通関係
うまいところに落とし込んだなという印象
2015/10/15
東京~新函館北斗間は2万2690円 JR北海道、北海道新幹線の料金を申請
(新聞記事)
この若干高いなぁという運賃に設定したのが今回随分JR北海道(というよりJR東日本)が練りに練ったなという印象なんですよね。
おさらいとして新幹線在来線の運賃・料金は
「普通運賃」と「特急料金」と「グリーン車などの設備料金」に別れます。運賃は距離で決まるので変動はありませんが、新幹線の特急料金は区間によって設定しますので高くも安くもどうにでもなるというものです。
●運賃計算は元々少し面倒くさかった
JRの運賃計算は東日本と北海道では見る表が違います。しかし、境界をまたいだ場合はJR東日本の運賃表を使用することになります。しかし、それでは北海道のちょっと高額な運賃が適用されないために境界駅を挟んだ先は加算運賃が設定されます。
さらに青森駅-五稜郭駅は地方交通線のため「換算キロ」を使わなければなりません。換算キロは営業キロの1.1倍を四捨五入したものです。このため、計算は結構複雑です。
一応素人が計算していますので誤りがありましたらご指摘ください。
現行の東京-函館・札幌の運賃を計算してみましょう。まず各区間の営業キロを算出します。
・東京-新青森
営業キロ713.7km
ちなみに盛岡-新青森は在来線が無いので新幹線の営業キロが適用される。東京-盛岡は在来線の営業キロ。
・新青森-青森
営業キロ3.9km
・青森-中小国(JR東日本とJR北海道の境界駅)
営業キロ31.4km・換算キロ34.5km
・中小国-五稜郭
営業キロ125.6km・換算キロ138.2km
・五稜郭-函館
営業キロ3.4km
・五稜郭-札幌
営業キロ315.3km
となります。
まず、東京-函館は
営業キロ878.0km運賃計算キロ893.7kmで基本運賃は11,660円
これにJR北海道の加算運賃中小国-函館129km分220円
を足して11,880円となります。
東京-新青森の特急料金(はやぶさ)は7,200円
新青森-函館164.3kmのB特急料金は2,250円
乗り継ぎ割引で半額となり1,120円(通常期)
合計は運賃11,880円+特急料金7,200円+1,120円で20,200円(通常期)
となります。ふぅ。面倒くせぇ。
同様に東京-札幌は
合計営業キロ1189.9km、運賃計算キロ1205.6で基本運賃14,150円
これにJR北海道の加算運賃中小国-五稜郭-札幌440.9km分320円
を足して14,470円となります。
特急料金は新青森-函館も函館-札幌も両方乗り継ぎ割引で半額になりますので、
函館-札幌のA特急料金3,110円が半額の1,550円(通常期)
合計は運賃14,470円+特急料金7,200円+1,120円+1,550円で24,340円(通常期)
となります。いやぁ、制度複雑ですなぁ。
●北海道新幹線開業ですこし運賃計算が楽になる
さて、新幹線が開業しますとJR東日本とJR北海道の境界駅は新青森駅になります。これだけでも結構楽になりますねぇ。
さらに、北海道新幹線区間は「幹線」の扱いになります。換算キロを使用しませんので運賃計算は北海道区間の加算運賃を追加するだけでよくなります。
・東京-新青森
営業キロ713.7km
・新青森-新函館北斗(現渡島大野)
営業キロ148.8km
・新函館北斗-函館
営業キロ17.9km
・新函館北斗-札幌
営業キロ318.7km
となります。
東京-函館は
営業キロ880.4kmの基本運賃は11,660円
これにJR北海道の加算運賃新青森-函館166.7km分220円
を足して11,880となります。新函館北斗から戻るかたちになる分距離がかさんで現行と運賃は変わりませんね。
特急料金は新幹線区間のみですので、これは先日の発表で11,130円(通常期)となります。
合計は23,010円となります。現行からは2,810円高くなります。
ちなみに
東京-新函館北斗は
運賃11,560+特急料金11,130円の22,690円(通常期)となります
東京-札幌は
営業キロ1181.2kmの基本運賃は13,820円
これにJR北海道の加算運賃新青森-札幌467.5km分320円
を足して14,140となります。こちらは新函館北斗から直通する分距離が短くなり運賃が安くなります。
特急料金は新幹線11,130円に在来線特急の乗り継ぎ割引1,550円で12,680円(通常期)
合計は26,820円となります。現行からは2,480円高くなります。
●気が早いけど札幌開業後の運賃・特急料金は?
さて、これを踏まえますと、北海道新幹線札幌開業時の運賃がおぼろげながら見えてきます。
運賃は在来線が経営分離されるなら新幹線そのものの営業キロで計算できるはずです。
新函館北斗-札幌の新幹線予定キロは211.5kmです。
ですので、そのまま現行の方式で計算しますと運賃が出てきます。
特急料金は今回少々高めの北海道新幹線の特急料金賃率から計算すると札幌-新函館北斗の特急料金は4,230円程度となりそうです。
・札幌-新函館北斗211.5km
運賃3,990円(現行300.8km・5,720円)
特急料金4,230円
合計8,220円
・札幌-新函館北斗-函館229.4km
運賃4,320円(現行318.7km・5,720円)
特急料金4,230円
合計8,550円(現行8,830円)
・札幌-東京1074.0km
運賃13,280円(現行1189.9km・14,470円)
特急料金15,200円
合計:28,480
となります。運賃だけで1割引状態ですので、その分特急料金を上乗せするものとは思われます。青函区間の特急券賃率29円とその他区間の特急券賃率20円で計算しています。ちなみにJR東日本は東京-新青森の特急券賃率は約10円、仙台以北を15円程度で計算しているように思われます。
札幌-函館は特急料金が高くなったものの大幅に距離が短くなり今と同程度となります。
札幌-東京はJR北海道区間とJR東日本区間の特急料金が足し算される(その上で520円割り引く)計算で、青函区間を高めに設定してみました。
●北海道新幹線の特急料金は高いのか
さて、コメントざっくり読みましたが、高いという意見が多そうです。確かに新幹線の特急料金と考えても東海道山陽新幹線より大幅に高く設定されています。そもそもなぜ北海道新幹線の特急料金は高いのでしょう。
JR北海道の会見では青函トンネル区間の維持管理費が嵩むためという説明がありました。まぁ、これに関してはある程度理解できるところです。しかし、本心はここじゃない気がするんですね。
それは「高くても乗るんじゃね?」と思ってるから。
今回新函館北斗-東京が22,690円(通常期)です。この金額って私絶妙だなぁって思ったんですよね。
函館-東京の航空運賃事情は比較的競合が無い事もあって高値安定です。
JALの正規運賃は35,490円、ある程度早期割引になっても2万円前後がメイン。
ANAの正規運賃は35,490円、ある程度早期割引になっても2万円前後がメイン。
ADOの正規運賃は27,390円、ある程度早期割引になっても2万円前後がメイン。
仮に株主優待券で半額にしても株主以外が株主優待券を購入するとチケットショップで5,000円程度です。つまり、自由の利く航空チケットは東京-函館をだいたい22,900円くらいかかると思っていい。あれ、どっかで見た金額ですよね。
早期割引で購入する層を取り込むことは考えておらず、旅慣れていない、旅行会社や駅窓口で切符を発券して貰う層には新幹線のいつでもほぼ変わらない料金制度は魅力です。その価格を航空にぶつけてきたとも言えそうです。
航空会社は対抗上割引をせざるを得ませんが、比較的座席数に余裕のある新幹線は割引余力もあったりします。
もし、今回の東京-新函館北斗22,690円(通常期)が、通算による特急料金であったなら、特急料金は9,500円程度約1,600円安くなり21,000円程度になります。だからといって安くなった!って感じしないですよね。2万円切ったなら安いと感じたでしょうから、これは定価は高めで割引運賃で値引き片道2万円を切る商品を出してくると考えます。
元々JRの運賃、料金制度は繁忙期もわずか200円しか増額しませんので、逆に閑散期や利用の少ない時間帯で使える割引切符で引き、繁忙期は正規の価格で利用して貰うというのは商売としておいしいものと思われます。
たとえばJR東日本のえきねっとトクだ値は最大25%引きで、北海道区間で適用になるかは不明ですが、同様の施策が行われれば17,000円程度の価格まで値引く可能性があるわけですね。仮に北海道区間を割り引かなくても充分2万円を切る価格を実現できます。この金額は航空機の早期割引とも遜色なく、実は新幹線は値引ける余力を残しているともいえそうです。
●北海道新幹線は誰が乗るの?
よくある北海道新幹線なんて誰も乗らないよ、飛行機の方が早いし!って話はよく聞くのですが、ちょっとお待ちを。
旅行者にしても用務者にしても新幹線や飛行機に乗りたいから乗ってるわけじゃないんですよね。その地域に用事があるから、観光したいから乗っています。
北海道新幹線が函館地域まで到達したことで、北海道の観光としては大きなプラスになります。なぜなら、北海道に来て貰うことが大事なんですね。函館地域まで来ればその先はバスで全く構いません。まして新函館北斗駅は立地的に函館市域にも、江差にも、大沼国定公園にも、もちろん札幌方面にも非常に行きやすい立地にあるんです。もう観光バス御用達な場所といっていい。
そういう意味では函館空港は市街地に近いものの比較的交通量の多い一般道を経由することになります。その解消のために函館新外環状道路が建設されていますが、まだ開通まで5年程度かかる上、一旦函館ICを経由しますので、若干遠回りになります。
もちろん函館市街地と東京都心のドアツードア的に見れば北海道新幹線は遅いかもしれませんが、首都圏の乗車位置が上野、大宮も選択できる上、道内他地域へのアクセスを考えると新幹線はかなり戦えるとみています。
交通機関は目的地によっても、価格などによっても変わりますので、高速交通機関を二つ手に入れた道南方面はこれから観光、産業両面での延びが期待できますし、必ずしも新幹線が不利ではありません。
●がらがーらな新幹線
とはいえ元の需要が1日4,000人程度の青函輸送を置き換える新幹線が何万人も急に乗ることはありません。仮に1日1万人利用があるとしても10両の新幹線700人以上の定員が10往復で14,000人ですので、間違いなく青森以北は1列に1人のってるかってくらいの究極のがらがら状態になります。現在の国土交通省試算は1日7,500人ですので、まずこれだけの利用を生み出せるかが肝です。
ちなみに現在東京-函館の航空旅客数は1日3,000人程度で座席使用率67.1%です。
北海道新幹線が仮に7,500人程度の輸送としても座席使用率は40%程度になります。
これは蓋を開けてみないとわかりませんが、なぜか新聞各社は新幹線ガラガーラの記事がお好きなので、一応そういうものだと思っていてください。好調といわれる北陸新幹線ですら1日2万人で座席利用率は40%程度になります。
これは函館なり金沢なりで満席になっちゃうと途中から乗れなくなるからですね。東京に到着するときに満席近くになっていれば全く問題ありません。
そういう意味では北海道区間では全くがらがらになる10両編成の車両を4本もそろえたJR北海道は太っ腹ですね。(まぁ、途中駅で分割というのもいろいろ弊害があるからなんだけど)
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添付は一応開業後の運賃料金を一覧にしてみました。間違ってるかもしれないけど
(コメント追加)
JR東日本にしてみますと北海道新幹線の客はほぼ確実に自社線をかなりの距離乗るわけですから、そりゃ協力的になるというものでしょう。
JR北海道にしても特急料金を新函館で分割することで確実に取り分を確保したとも思えるんですよね。
首都圏で行う観光キャンペーンはすさまじいものがありますし、大人の休日倶楽部的なものだけでも有効時間帯の新幹線は埋まるんじゃないかとは思います。
やはり閑散期と平日の需要がどれだけ伸びるか。そのあたりは地域として考えなきゃならないんですね。そういう需要は「早割」の利用者とは必ずしもリンクしませんし、そもそも早割客は安さだけが魅力なのだからそこまでガチにやり合わなくても、収益を考えれば無視して良い数とも考えられるんですよね。そもそも繁忙期の早割は決して安くないわけですし、それなら新幹線と大して値段が変わらないということにもなり、閑散期の早割客は数的にあえて取り込むほどでも無いと考えているような気がします。
JR東日本としては東北への観光需要が北海道へ行くというのも危機感としてありそうですが、前の通りほとんどが自社通過顧客なら損もしません。ただ、盛岡以北の乗車率改善のために思い切った盛岡乗り継ぎの割引切符とかも出してくるかもしれませんね。
来年の連休明けがそういった施策のポイントかもしれません。
一応私の掌握している国道交通省の統計で東京-函館は
年間旅客数 搭乗率 1日平均旅客数 年間貨物(t)
2011年 1,089,296 72.2% 2,984.4 12,236
2012年 958,468 65.7% 2,625.9 9,496
2014年 1,079,526 67.3% 2,957.6 8,194
となっています。
これの意味するところは、だいたい1日3,000人くらい東京と函館を利用する人がいますってことですね。貨物が減ってるのは気がかりで、1日22tは航空コンテナ15個程度で、函館発の方が5363tと多いんで、鮮魚輸送なんかもあるのかもしれませんが、こう減ってるのはなんでしょうね。
さて、少々古い資料になるのですが、2007年の東京-函館の航空機搭乗者の利用目的は観光目的利用が54%を占めています。つまり、かなりの率がツアーなんですよね。ちなみに団体包括運賃の最も安いものは運賃の70%引きあたりなはずなので、最安値は1万円あたりになります。とはいえ、実際にそんな運賃が出てくるのは閑散期の平日くらいですので、実質的なところはレガシーキャリアはだいたい運賃の45%引き程度、およそ1万8000円前後が平均値になるはずです。ただ、これは包括を入れた値です。個人向け運賃としてとなるともう少し上がりますね。
ANAで見ますと今日ANAのサイトで見ても比較的閑散期の11月であっても「特割」が16,000円を割り込む例は無く、旅割28ではじめて14,000円台が出ます。AIRDOもスペシャル21かスペシャル28まで行かないと13,000台は出ず、2万円を少し割るくらいの金額が平均になるはずです。ただ、AIRDOは座席の25%はANAとのコードシェアですので、実際にその席がどれほど残っているかは未知数です。
これまた国土交通省の「航空会社各社の輸送人員あたり旅客収入」ですとANAは15,237円ですので、これが全路線の「平均」です。輸送人キロあたり旅客収入で見ても17円前後ですので東京-函館の区間距離では13,362円あたりが平均収入です。先の例の様にこの路線はツアーによる値引きの大きい区間となりますので、こうなると、航空会社が個人向け運賃としてこの金額より安い運賃を出すことには当然抵抗があるというものでしょう。
あくまで用務客という意味での東京-函館の平均運賃はおよそ2万円というところに落ち着くものと思われます。このあたりを詳しく調べるのは航空会社が情報を出さない以上困難でしょうね。
そういう意味で航空会社としては新幹線開業後も現行の767から737あたりに変えることで搭乗率を上げコストを下げる選択が可能で、航空と新幹線は間違いなく共存すると思われます。そのあたりが北陸新幹線開業後こてんぱんになった富山空港あたりとの差ですね。まぁ、富山はANAが撤退するとハンドリングが一切できなくなって空港自体の閉鎖に追い込まれるので県は間違いなく補助かけても残すでしょうけど。
ちなみにピーチあたりのLCCだとこの数字が7500円前後に8.5円程度となります。もし東京-函館にLCCが誕生したなら平均運賃は6700円程度になりますので、かなりの驚異とはなります。ただ、需要から考えるとLCCは難しいと考えていると思われます。あとはAIRDOの出方でしょうね。ANAとの関係上撤退は嫌でしょうが、便数を考えると不利です。まして、JALは運賃が高止まりですが何か勝算があるんでしょうね。
これは別な機会にまた書きますが、本来新幹線は東北と併せて「黒字」であればいいはずなんです。仮に新青森-函館が1日7500人集められたとして、そのうちの約7割が東北なり首都圏に直通するなら八戸-新青森は現在の約1万人の利用客が1.5倍になるんです。そのチャンスをみすみすJR東日本が逃すわけが無く、JR東日本区間の割引を大きくしたツアープランや企画切符での北海道新幹線振興策を考えているはずです。JR東日本としては東北新幹線への投資が一段落しましたので、純増分を値引きに充てられる額も大きくなりますし、ほぼ確実に航空に対してのガチンコ勝負に(あくまで首都圏からのツアー客のための)出ます。
しかしながら北海道側から本州への企画は残念ながらそう大きなものはないでしょうね。JR東日本が現状ではパイの少ない北海道のユーザーを安く乗せる義理はありませんので。これは大きなパイを争うことになる札幌延伸までの辛抱でしょうね。
別途日記にも書きましたが、限定的とはいえスーパーモバイルSuica特急券はかなり意欲的な金額を出してきました。列車限定ですし発売枚数も限られるでしょうが、今まで「はやぶさ」適用がなかったので、これはかなりな意欲を感じます。
北海道側からの割引切符の設定が少ないのは想定内ですが、えきねっとのシステムをJR北海道にも解放した形になりますし(わざわざ名称を分けたのがよくわからないが)今後に期待ですね。