北海道の交通関係

北海道新幹線はできる子?できない子?

2016/01/06
北海道新幹線を無駄の象徴ととらえて不要とか不便とか誰も使わないと言われると、ホントかな?と一応考えてみたくなるんですが、これ、私は大きな変革になるとにらんでいます。

●地元民の目から考えてみる
まず、あなたが函館市民(もしくは北斗市民でも七飯町民でもいい)であると考えて「お出かけしよう」と考えたとしましょう。
ここでいうお出かけは仕事ではなくて買い物だったり少しスペシャルな食事だったり、要は「都会にいこうぜ」的なものとしましょうか。

今まで函館で満足できない層が、最初に行こうと思う都会は「札幌」ではないかと思うのです。
片道列車なら4時間程度、クルマで行くなら5時間程度はかかります。

この4時間なり5時間という数字が、北海道新幹線では首都圏への所要時間ですから札幌と時間はほぼ変わらなくなるわけです。これが劇的な変化な訳です。

もちろんいままでもひとっ飛びで行ける航空という手段がありました。これは特に首都圏に向かうにはスタンダードな手段でしょう。
しかし、気軽という意味ではどうしても少し抵抗があるわけです。新幹線は身近な駅で切符が買え、当日でもほぼ乗れるだけの席数を確保しています。
(もちろんこれはいいことばかりではないけれどね)
ともかく実用になる交通手段がもう一つできるんだということがまず大事なんですね。

いままで選べなかったものが選べるようになるからこそ、競争も起きるし、道南圏から首都圏なり東北の行き来が増えるわけです。


さて、単純な函館都心部から東京都心部への所要時間では航空機にはまだまだアドバンテージがあるわけですが、この時間差というのはそれほど意味がないのではないかと私は思うのです。
少なくとも全員が飛行機を使うと言い切れるほどの差とは思えないんですね。

特に函館駅から新函館北斗駅が遠いとか、函館は市街地から空港が近いからというご意見というのは実際にはたいして問題が無いと私は思っています。
なぜなら駅にも空港にもあくまでアクセスはクルマだからです。

函館-新函館北斗のアクセス列車など3両で充分とJRが考えた理由もそれです。函館経済界が新幹線に満席乗ってきたらアクセス列車に乗れないなどと言うのはお笑い種で、
新函館北斗からアクセス列車に乗る人は多く見積もっても3割程度、しかも新幹線自体が満席にならないのでね。
鉄道沿線の住民の数は知れており、ほとんどが駅の駐車場を利用するのが一般的であると思うのです。

そうすると重視されるのは施設そのものの近さよりも駐車場そのものの整備内容です。

JRは函館駅と五稜郭駅にパークアンドライド駐車場を500台以上抱え、その利用金額は1日500円です。
函館空港は1日800円の駐車料金です。昨年拡幅しまして791台の駐車スペースを持っています。それだけ広域から空港は人を集めているということです。
新函館北斗駅には580台の駐車場を用意しています。1日500円程度で利用できるようにするというのが北斗市の考えのようです。
そして木古内駅には町が300台の無料駐車場を整備します。

アクセスが多少よく、近いからといって駐車場代が高ければそれはマイナスにしかなりません。木古内町が無料駐車場を整備したのは前例がたくさんあるからに他なりません。
たとえば無駄な駅批判の多い七戸十和田には600台、いわて沼宮内には200台など駐車場で沿線以外の利用客を集めるのは標準的な話です。
10分遠くても駐車場が無料を選ぶというのはこの地域にとってそれほど不思議なことではないのです。

北海道新幹線の北海道側2駅木古内と新函館北斗はどちらも道路の面では恵まれています。2つの駅とも道路のジャンクションたる場所に立地してることは相当なアドバンテージなのです。

北海道を揶揄するときに「ジャスコ110km先」の看板の話はご存じの方も多いでしょう。でも、逆にその110kmを特に苦も無く運転する人がいるのも北海道なのですよ。
今後予定されている(仮称)新八雲も長万部も倶知安も(仮称)新小樽もちゃんと考えられたジャンクションにできることを覚えておいてください。

北海道新幹線は本気で沿線客を取り込むことを考えています。

町の規模が小さいとか接続の列車が遠いとかそういうことは想定内で、もっと広く客を集め、そして新幹線でやってきた客を拡散させる場所に設置されるのです。


●首都圏観光客の目から考えてみる
逆に首都圏から北海道に遊びに行くことを考えましょう。
いままでは航空機で新千歳空港なり函館空港に入り、その町を観光し直接帰ることが多いのではないでしょうか。
新千歳空港は札幌都心部からは離れていますが道央圏という広さで考えると便利な場所にあります。そしてここでレンタカーを借りるなり観光バスに乗ることでどこへも比較的便利に行くことができます。
函館空港は函館市内には近いのですが、道南の代表的な観光地への足は決して便利ではありませんし、あまり道路には恵まれていないのが残念なことです。
今後自動車道が空港まで延長されますが、それまでは距離は近くても意外と時間がかかる空港であるわけです。

先の通り新函館北斗駅はどこへ行くのも便利なジャンクションにあることは、観光業者がバスなりで観光客を運ぶのも非常に便利であるということです。
函館方面の自動車道は目の前、札幌方面への高速道路もそれほど離れていませんし、景勝地である大沼もわずかな距離です。
函館市内の観光地を回っても、特に混雑するルートを使わずに駅にアクセスできることは都心から離れた場所に作った利点の一つです。
そして木古内駅を使えば特に江差、松前方面の観光地は大幅に時間が短縮できるわけですし、片道は新幹線、片道は航空、または北海道と東北の両方を見るツアーも組みやすくなります。

いままでできなかったタイプのツアー、いままであまり有名ではなかったが、いい観光地を巡れるという意味で、ツアーの設計はかなりやりやすくなりましょう。
これは航空がダメだというわけではなく、周遊することを考えると新幹線は得意分野があるということです。どちらが優れているではなく、利点と欠点があるわけですね。

そして、道南圏から道央圏へはどうしても4時間以上の時間がかかります。これは北海道観光がバスに閉じ込められる形でしかないと批判される理由になっています。
道南に降り立つ観光客をいかに北海道の他の地域に広げていくか、それが北海道に求められることです。


●用務客の目から考えてみる
新幹線をビジネスで使うという意味では、東北との交流があげられましょう。函館市内から仙台までの所要時間は札幌より大幅に近くなるのです。
これは道南に対する道央札幌の相対的な地位が下がることを意味します。
首都圏からの出張を考えても、東北出張にプラス道南への出張ができるというのは「線」である新幹線の利点です。

東京から北海道に出張するなら札幌が目的地であれば「札幌」しか巡れなかった。そこからどこへ移動するのも広大な北海道は時間がかかりすぎるのです。
しかし新幹線はちがいます。函館のあと盛岡に、そして仙台に寄って東京に戻るというのができるんです。

今までこれは北海道以外は当たり前にやってきたことです。関西支社のあと名古屋支店に寄って帰るとか、当たり前にやっていること。
これが北海道でやっとできることです。

これは本気で「札幌」には危機だと考えた方がいい。大げさと言われるかもしれませんが、この効率重視の世の中で、札幌だけをターゲットにはできません。
逆に北海道に今まで進出していなかった企業が入ってくることでもありますから、そういう企業が道南を足がかりに新幹線延伸とともに札幌へも進出する。そんなことも考えられるわけです。

北海道の経済界は新幹線を確実に甘く見て、観光振興的な要素しか見ていないでしょうが、新幹線が北海道に来ることはその事実以上に北海道が変革を求められることになります。
そのくらい「時間距離」というのは大きいのですよ。


●実はできる子?そんなもんじゃない
これから北海道は「新幹線後」になります。新函館北斗と木古内の「商圏」は道南圏だけに限らないわけです。
元々東京-函館の航空輸送は60%以上が観光というデータがありました。これ、変だと思いませんか?1日平均3000人の航空利用客が半分以上観光客。函館は観光地ではあるけれど、では用務客はどこにいるんでしょう。

今まで需要がなかったわけです。函館、道南はビジネスの場所じゃなかったということです。

少ないとはいえ道南地域は約50万人の人口があります。そして分散しているその人口は先の通り「クルマ」という手段を持つ。
そして対岸の青森にも県だけで100万人がいるんです。今まで時間がかかりすぎていた人的交流が一気に進むのは間違いの無いところです。
飛行機や船ではできなかった交流がこれからスタートするのです。

ちょうど新幹線は鹿児島から函館まで「背骨」ができました。これをもう少しだけ、今は脳血管が詰まっているような細道の札幌まで繋がれば、日本の動脈はほぼ完成します。100万都市が交通機関二重化されていることは大事なことです。

札幌開業は北海道だけではなく「日本」が変わるほどの変革がもたらされるのです。

●でもガラガーラ
毎度ですが、北海道新幹線の新規開業区間の利用予測は7200人/日です。有効時間帯の列車で割るとわずか1列車300人程度となります。これは10両もの長大編成で運行する新幹線の4割以下の乗車率になりますので、いつ乗ってもガラガラです。

でも、これ批判される筋合いもないわけですね。八戸-新青森の現在の利用者は約1万人/日です。これもガラガラだったわけです。しかし、今回開業分が加わると、約1.5倍になります。混んでるとはいえないけど、ガラガラでもないくらいにはなっていくわけです。最終的に首都圏に近いところではほぼ満席であればいいということです。

逆に函館で満席なら青森の人も岩手の人も乗れなくなってしまうのです。本来新幹線はトータルで赤黒を出すべきで、最末端の一部区間を取り出して赤字だけしからんではいけません。

特に某新聞社が躍起になって赤字ガラガラアピールするでしょうが、北海道新幹線の実力はそこじゃないんだよと哀れみをもって見てあげてほしいなと思うのです。



●さいごに戯言
誰がなんといっても、慌てることなく北海道新幹線は「できる子」なのです。叩かれても素知らぬ顔で新幹線が作られ、コンクリートから人とか抜かしてた民主党政権下でも工事が止まらなかったのは北海道新幹線が間違いなく国のためになる事業だからです。

そして札幌延伸が滞るようなことがあれば、脆弱をいつまでも抱えることになります。活火山のひとつ樽前が噴火すればもう新千歳空港はほぼ機能を失います。その頃に新幹線ができていなければ北海道は間違いなく「終わる」のです。これは危機管理の問題でもあるのです。
今はなんとか工事を進めてる段階の札幌延伸。これを政争にせず速やかに作ること。これが大事なことなんです。

最近はyoutubeとかで列車の前面から走行映像を映す動画がありますよね。これで函館-青森を見てください。在来線と新幹線規格の区間がどれほどに差があるのか、そして在来線の改良なんていうのがどれだけ無意味なのか、新幹線と在来線は天と地ほどに異るのがわかります。

新幹線がどれほど「できる子」なのか、それだけでもはっきり見て取れるはずです。

試される鉄路、北海道新幹線は「本当はできる子」
(記事)

(コメント追記)
あくまで周遊という観点からするとチャーター機も一つの方法とは思います。
本当はJRが在来線での接続をもう少し強化できればなんですけどね。
ちょうど新函館北斗駅近くの函館本線は上下線が大きく分かれていたり別線となっていたりで貧弱な区間であり、あまり増発余力が無いのが観光列車なりの運行を阻害している要因で、そういう意味でも早く札幌まで開業させる必要があると私は考えます。

カテゴリ: 北海道の交通関係 JR北海道北海道新幹線

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