北海道の交通関係

民営化30年で地方路線の廃止を考える

2016/08/03

とりあえずJR北海道の話しは後回しとして、民営化から30年経ちましたが、今後起こりえそうだなぁと思うことを書き連ねておきます。

というのは、JR北海道の地方線区より、JR東日本の地方線区の現状が非常に問題で、今後維持できなくなる可能性が出てくるという観点です。


2015年度のJR東日本決算から収入の内訳をを見てみます。
http://www.jreast.co.jp/investor/financial/2016/pdf/kessan02.pdf

新幹線の定期券収入236億円、定期外収入5545億円は2014年度比で111%という大幅な伸びを記録しています。そして、在来線も定期収入4708億円、定期外収入7558億円となり、102%程度と前年を維持できていることになります。

しかし、在来線に関しては、関東圏(東京横浜八王子大宮高崎水戸千葉支社管内)とその他(新潟・長野・仙台・盛岡・秋田支社管内)の分けがあります。見てみましょう。

定期収入 関東4523億円 その他184億円
定期外収入 関東7038億円 その他520億円

JR東日本の鉄道運輸収入は18,047億円ですので新幹線32%、関東圏在来線64%、そして関東圏外在来線で4%という比率になります。(これは「単体」であるから東京モノレール等は含まれない)


次に、JRになってからの「路線別平均通過人員」の推移を見てみます。
http://www.jreast.co.jp/rosen_avr/pdf/graph.pdf

新幹線は東北新幹線や北陸新幹線の延伸がありますが、延伸の無い上越新幹線でも153%、長野オリンピック後低迷し金沢延伸後急激に伸びた北陸新幹線が168%、東日本大震災で大幅に落ち込んでいた東北新幹線も130%と順調な伸びが続いています。ビジネス客の少ないと言われる東日本の新幹線ですが、2007年をピークに落ち込んでいるのはリーマン・ショックと思われますので興味深いところです。

在来線は表を見ると一目瞭然、首都圏エリアで落としているのは鶴見線くらい。注目は相模線で電化した91年で200%近く昨年は300%ですから民営化後客数が3倍になったということです。
千葉や水戸、北関東は減少、久留里線は40%程度になっています。

さて、問題はここから。東北で伸びているのは田沢湖線。これは秋田新幹線の在来線区間をここに算定していると思いますので秋田新幹線開業の97年以降は大幅に増えて169%、現在は落ちた落ちたと言われている仙山線も87年比で言えば137%。新潟都市圏で増発された白新線も増加していますが、それ以外は惨敗です。
特に山形新幹線で大幅に伸びているはずの奥羽本線が55%と民営化後半分程度まで減っています。実際には福島-山形は微増、その他山間部を中心に大幅に減少していることが原因です。それ以上に田沢湖線は元の需要が少なかった(東北新幹線開業前はメインルートですら無かった)ことが差が出た要因ですね。
最も差が大きいのは陸羽西線でわずか19%、元が少ないこともありますが、現在391人/日です。

JR東日本の地方の路線は客が減り続けていて、JR東日本の利用客のわずか4.2%しか占めていないということです。仙台や新潟などを含めてもこの結果なのです。


さて、それを元に、私があくまでも自己流の経費案分を行いますと、だいたい関東圏の鉄道収入利益とその他地方部の赤字額が釣り合うという構図になります。とっても簡単に言いますと、JR東日本の4.2%の利用客のために、78.8%の利用客の支払った運賃が使われているという形になります。

つまり、JR東日本の利益のほとんどは新幹線だけで稼ぎ出している、そして、関東圏の満員電車に揺られる利用客の改善はほぼできない状況になっているわけです。

もちろん、これはいちがいにけしからんというつもりはありませんが、JR東日本も既に鉄道としての利点を発揮できず、バス転換にした方が地元利益にかなうと思われるような路線、つまりは出血多量の患者に、首都圏の鉄道利用客の金、つまり輸血を行っているという状態になるんですね。

民営化から30年、上場から25年経とうとしています。特に株主から「そろそろいいんじゃない?」という声が上がることはそれほど不思議なことではないのです。

JR東日本は詳細な収入、駅、路線利用客のデータを公開しています。沿線は首都圏の金があるから廃止はしないだろうとタカをくくっているでしょうが、これから少子高齢化で列車を動かすことを維持できる人が少なくなれば(これは利用客も職員もという意味である)地方路線を維持できるかは未知数と考えます。そして、首都圏の鉄道も特に高架橋の維持管理はこれから莫大な費用がかかってきますので、JR東日本がいつまで地方路線を維持するかは未知数です。



さて、JR北海道の話しですが、元々収入が無く、経営安定基金の運用益で赤字を埋めるという観点で元々設計されていました。しかしながら急速な少子高齢化でとかく利用客数が維持できないという観点があります。

ちょっと面白いデータを見ましょう。表をご覧いただきたいのですが、昨年度のJR北海道の輸送量と運輸収入です。JR東日本の関東圏を除く地域と、JR北海道の比較です。


金額ベースではそう大きく違わないのをご理解いただけますでしょうか。

これはJR東日本の地方線は特急が少なく、新幹線は別途計上というのはありますが、JR北海道の収入に占める定期外収入(特急等の利用者)の比率が高いことがわかります。鉄道輸送量も昨年より伸ばしていますし、あくまで数字だけ見るとJR北海道の方がまだ「健全」に見えるのがおわかりになりましょう。

今年度の決算は北海道新幹線の開業がありますので、利用客で約500万人キロ、収入で80億円程度増える予想で、金額ベースではJR東日本の地方線区を抜かす可能性が高いです。

これの言っていることがわかりますか?もしJR分割で「JR東北」ができていたら新幹線の恩恵はあってもいまのJR北海道より悲惨な状況になっていたということです。あくまで廃止が必要かどうかは「収入が確保できるか」です。その地元の路線の利用客がいるかどうかや自治体がどうかでは無いんです。収入を得られる路線を持っているかだけなんです。
仮にですよ、JR北海道に「南武線」があったら、基金運用益だけで黒字になります。収入だけで292億円増え、だいたい30億円ほどの黒字を創出できますので。(これはあくまで理論値であることに留意が必要であります)

そもそもJR北海道に限らず地方鉄道の問題のほとんどはJR東日本のような収入のある路線を持って内部的に地方に留保できるかだけの話しなんです。

もしJR北海道の既に役割を追えた路線を残そうとういうなら、収入を手当てする方向に動かなければ成りません。高橋はるみ北海道知事はJR北海道にさらなるコスト削減、特に人件費削減を申し入れたそうですがとんでもないことです。JR北海道のほとんどの社員は北海道在住者で7000人以上も社員がいるわけです。仮に一律100万円給料を下げても年間70億円の削減にしかなりません。社員をリストラすれば無人駅化とさらなる減便を受け入れるしかありません。さらにその一人一人は消費者であり、北海道の購買額を下げることになります。高橋はるみ知事の発言には正直がっかりしました。そんなものでJRが立ち直るならもう既に立ち直っています。
それ以前にJR北海道の職員給与は人件費476億円ですから平均680万円、さらにこれは連結ですから鉄道外の職員も含んでいますので実際はもっと安いはずです。既に職員給与の引き下げは難しいものと考えられます。

結局北海道が廃止を避けるためにできることは上下分離の受け入れと、道職員などの鉄道利用の強制くらいしかないんじゃないですかね。

何度も言うように、廃止させないためには収入の増加しかないんです。それができないのなら廃止を受け入れるしかありません。


(コメント追記)
JR北海道の札幌圏とJR東日本の仙台・新潟圏の輸送密度を比較しますと
札幌圏(2014年度)
・桑園-医大学 28.9Km 16,873
・札幌-岩見沢 40.6Km 43,025
・白石-苫小牧 68.0Km 43,433
・小樽-札幌 33.8Km 44,099
に対して
仙台圏(2015年度)
・白石-仙台 45.0Km 29,313
・仙台-小牛田 43.2Km 18.183
・あおば通-石巻 49.0Km 18,879(震災前2010年は21,450)
・仙台-愛子 15.2Km 24,045
新潟圏(2015年度)
・新発田-新潟 27.3Km 16,485
・長岡-新潟 63.3Km 15,504
・吉田-新潟 34.0Km 14,246
・五泉-新津 9.9Km 4,152
となります。編成両数で言えば仙台や新潟が2両単位、札幌圏が3両単位というのは、なんとなく理にかなっていることがご理解いただけようかと思います。

JR東日本の首都圏以外の地域に関しても、仙台と新潟の都市圏輸送は伸びていますが、都市規模という面で見ますとちょうど仙台市と新潟市を足したくらいの人口を札幌市は有しているわけですから、収入や利用客の総数という面で似通ってくるのもまた理にかなっています(輸送密度なので直接足すのはナンセンスではありますが、だいたいの利用客という意味ではこのような感じになりましょう。

ちなみに駅利用客数は
札幌 93,313(2014年度)
仙台 84,964(2015年度・うち新幹線は26,029)
新潟 37,446(2015年度・うち新幹線は9,077)


札幌圏は決して少なくない利用客を抱えているとはいえ、札幌圏の利用客数や収入は首都圏で言えば武蔵野線あたりの収入、利用客数と相違なく、どれほどに首都圏の利用客が多いかというのが伺えるというわけです。

武蔵野線は比較的距離を乗る方の多い路線で、優等列車こそ走っていませんが、駅間距離などの面で札幌に近いと考えられます。
・武蔵野線 105.5Km 111,377人/日 407億円売上
・札幌圏全 171.3Km 147,430人/日 397億円売上
(輸送密度をあくまで足しただけで有り、当然本来ならもっと下がりますが、だいたいという意味では武蔵野線と近いことがおわかりいただけるでしょう)

本文中でいう、南武線が、45km159,992人/日で287億円売上ですので、現在の札幌圏の利用客数、売上にこのくらい足さないと現在の路線を維持できません。
逆に考えると、280億円程度「特急」で稼ぐことでも路線を維持できるかもしれません。その場合は片道1万円としても、1日7万人の利用客増が必要になります。現在の特急列車の利用客が1日2万人程度になりますので、これまたあまり現実的な数ではありません。

つまり、少なくとも鉄道利用者の増加や値上げで現在の全ての路線を維持することは「絶対にできません」もう廃止が前提になっているということを、既に道内自治体、マスコミは知っていてJRを批判しているわけです。




札幌圏への人口の集中が札幌圏とそれ以外の地域への移動そのものの減少となって鉄道利用を押し下げているという現状です。特に長距離特急の利用が減っていて、その減りが激しい稚内、網走への路線を今回手を着けざるを得ないわけです。
それでも本数は維持するというのですからいじらしいところですし、それすら文句を言う自治体は実際JRを利用していないのだから(だから交通弱者って話が出る。本当に必要なら交通手段を選べる人はJRに乗るべきと誘導できるはずだから)JRとしてはほぼ無視する考えでは無いかと思いますけどね。
そもそも自治体と仲良くしようなんて思っていないだろうし。


JR東日本については、内部補助として首都圏利益<地方圏赤字になった時点で当然地方路線の廃止の話になります。震災という非常事態はあったもののBRTがある程度の成功を見たわけですから、当然収支の合わない路線から廃止していくことが考えられます。首都圏でも千葉県内や北関東では減らしているわけですからいつまでも内部補助が効くわけがないのです。

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