北海道の交通関係

聞いてきた③地域公共交通シンポジウム in 札幌 ~北海道における持続可能な交通体系の構築に向けて~

2017/06/09

○基調講演 「「鉄道を残す」から「地域公共交通を守り、育て、活かす」へ!」
名古屋大学大学院環境学研究科教授 加藤 博和 氏

※前回の続きです

多くの鉄軌道廃止代替バスに見る地域公共交通への「役に立たない固定観念」
だいたい、鉄軌道廃止の問題になることはその線区がその地域の実情に合わない。過疎化とかモータリゼーションとか言っていますが、廃線になる路線は過疎化とかモータリゼーション以上に利用者が減っています。地域に取り残されているということ。
で、それを縫って代替バスを走らせるとより減少するんですけど、鉄道に比べてバスは定時制も悪く、旧駅も引っ込んだところにあるから寄ったりして必ず遅くなる。運賃が直通では無くなるので高くなる。ただバスで高いだけで無く、乗り継ぎだから高くなる。
当然減るんだけども、それをもって鉄道廃止、バス化は失敗だとかバスでは鉄道の役割をカバーできないとか、全く頭使ってないとこういう結論になる。
そうではなく、鉄道廃止議論が、時代から取り残されていた鉄道中心の地域、地域が鉄道中心じゃないのにですよ、地域が鉄道中心では無いのに公共交通は鉄道中心の網。これを残すか残さないかは知りませんがリニューアルするチャンスであることに気づかず、とにかく鉄道存続あるいは鉄道代替バス。これ、「何も考えていない」頭使っていない固定観念にとらわれて、ニーズとかけ離れた、要するに地域にとってあまり必要では無い路線網にしてしまう。こういうことが全国至る所に見られる。
つまり、代替バスであるときや鉄道を残す時の路線やダイヤ設定は、先ほどのえちぜん鉄道とか和歌山電鐵と同じですよ、鉄道は元より、その周辺やバスやタクシーを含めて全部見直す。こういうことをしないといけないし、逆に鉄道が無くなったらどうバスを走らせるかというのはバスの特性をよく考えて走らせなければいけない。

もちろん鉄道の線路敷きが使えれば、通称BRTは有効な方策の一つとは思いますが、すぐできないので廃線してから線路を取って整備するのに1年くらいかかる。四日市もそれが問題。その一年間どうするんですかと。その間ものすごく渋滞してしまう。だったら鉄道の方がお金もかからずいいんじゃないのってことですね。

私が仕事した中の一つ長野電鉄屋代線。今は走っていません。ここは90年走り続けました。千曲川の東の方を走っていました。長野市は川の西の方にありますので、やや環状方向の路線でしたのでそっちの方に動く人が少ないということで利用がどんどん減った。
そこで自治体が長野電鉄活性化協議会という法定協議会をを設置して利用促進の活動や社会実験をしていました。そこそこがんばってやっていました。が、利用が増えなかったので、なんと、この活性化協議会で多数決してやめた方が良いんじゃないかという人が多数だったという、めちゃめちゃな決め方でやめることになった。当然そんなことしたら地域の信頼関係やモチベーションはめちゃめちゃ。
そうなると私のようなのが呼び出される。
呼び出されていろいろやった結果として、たしかになにかできることはあったかもしれないけど、私から見れば難しい。ということで、代替バスで鉄道利用者を逃がさないことはもとより鉄道だけでは困難な地域ニーズに則した公共交通網に転換していくか。
簡単に言うと鉄道の駅から病院も高校も遠くて使えなかった。そんなところに病院や高校を建てる行政がダメだと言えばダメなんだけど、建てちゃったものはしょうがない。どうしたら良いかと考えて、利用者や事業者と検討していろんな工夫をして運行したら、住民の皆さんもここで力を出さねばダメだと参加していただいて、結果としては利用者3割減ですけど、廃線前は客が来ますので、それを考えると減少は最小限だった。
松代駅の写真に「屋代線90年に感謝 あしたへ」これは今までに無かった発想。代替配線はおしまいと考えていた、しかし鉄道はおしまいだけど地域はおしまいじゃない。
地域はこの鉄道は残念ながらもう地域にとって必要なくなったけど、地域公共交通は必要ですから。だから明日に向かってまた頑張りますよという決意をここにしていただいた。

こういうことを見ていると最もやってはいけないのは、鉄道存続を目的と思っちゃいけないということ。鉄道は手段、しかも高価な豪華な手段、大量輸送でないと効果が出せない、需要が少ないのであれば他の方法で安く提供できる。だから、国は支援が鉄道に対して厚くない。利用が多いところは良いんだけど、少ないのなら別の手段があるのではないですか?
とにかく残せというとそういう合理的な手段のことを全て忘れてしまう。で、何とかイベントで良くしようとか、乗って残そう、何の用事もないのにここからここへ乗ってまた戻るみたいなそういうアホなことが起こる。
そうじゃなく地域の生活に根ざしたものではなければ、とうてい存続できない。もちろん観光って大事ですが、観光は景気やブームに影響されるしセンスもあるので、ここに頼るのは非常に危険ですね。
本当に地域を、公共交通を、それに頼る人々の生活を大事に思うなら、まさに今、敗戦問題が出てきた時こそ考えられる時。
万が一廃止決定になったとしてもそれでやる気がなくなるなんてもってのほか。ってことです。

キーワードは「残す」から「活かす」へ。です。

三江線は私も行きましたけど三江線の沿線の皆さんは利用がとても少なかったのもあって、鉄道が無くなることにそうショックは受けていない。ただ、元々少ないものだからこれからどうやってこれから作り直していくのかに迷いを持っている。
が、消してこの地域に公共交通がいらなくなるわけでは無い。だからやる人はがんばってどうしたらいいか考えておられる。

そういうことを考えるにおいて、私はテストに出ますよと5箇条というのをあげています。
1・目的の明確化
2・適材適所
3・一所懸命
4・組織化
5・カイゼン
この5つ、そして答えは現場にある、現場にしか無い。だいたい現場見ていない政策というのは頓珍漢。

JR北海道の問題を考えると、よくごちゃごちゃに考えてしまうのが、幹線、ローカルというのを一緒に考えてしまう。両方やっているので切り離すのは難しいのだけど、それぞれのことは別々に整理しなければ訳がわからなくなります。

幹線については、速く走らなければならない。高速道路ができてるんで負けてる、負けていたらダメで、はっきり言うと新幹線に近くないとダメということがいえます。
そういうふうに北海道の幹線を持っていけるかどうかというのが大事だし、私は是非、お金がかかってもやって欲しいと思っている。

そして生活交通の方は、JRさんがやっているとなると、全国、私のいる地域もそうですがどうしても維持に責任を感じない。JRがやってくれるから、あるいは手を出せない、JRに言っても何もやってくれない、この2つはどこに行っても同じです。
で、やったとしても事業者側から見れば自治体や地域の意見は稚拙に感じる。おまえらやってないからそんなこというけど、やってる立場からすればそんなのできない等おっしゃる。これはJRに限らず民鉄でもいつでもあること。だからお互い勉強していかなければならない。
そして、内部補助で廻っているというのが今もJRの原則です。だけど、JR以外は受給調整規制が廃止になって内部補助が否定されている。それで考えると北海道は内部補助がほとんど不可能なのに維持に対する主体性が低い。これでは、地域がモチベーションが低いと外からも支援し難い。こういう悲しい構造になっちゃっています。そのように名古屋の人間からすると見えます。
だから愚直ですけど、鉄道あるいは地域公共交通を作るとか見直すとかやり直すとかいうのはまちづくりとか村おこしから来るものだと。つまり、地域公共交通というのは沿線の限られた地域に大部分の便益をもたらすのだから、地域が参画して頑張らなければならない。地域のニーズを、今不便なので使えないじゃなく、もし便利になったら、今できなかった思いつかなかったこんなことあんなことできるよね、そういう想像が膨らむような、そうゆうニーズを把握して、それによって今まで考えられなかった沢山の人に利用される喜んでいただける、それがさっきの「えちぜん鉄道」や「和歌山電鐵」の成果です。20%とか30%とか利用が増えるというのは。

それではなく、とにかく残せとかとにかく走らせろって言うのはそういうアイデアが全く出てこない。そのためにこそ地域を知り入り込み、巻き込んで取り組む、これをやらなければならない。いいものができると、鉄道や公共交通を使ったライフスタイル、魅力、持続可能な地域をつくりだす。これが地域公共交通の存在意義であり付加価値である。

鉄道を活かしていくというのはまさにこういうことであって、お願いしてる暇があるなら自分でやってみたらどうですか?そういうことです。

その方法として例えば地域公共交通活性化再生協議会っいうのがあるわけです。
これは関係するいろんな方が集まって、目的を共有し、どう実現するのかを遠慮せずに時にはノーガードの打ち合いもあります。どれだけ打ったか打たれたかわからない。
でも、決まったら、地域を良くするという目的は一緒なのでみんなで協力してどんどんやる。
その決めたこと、目標、各メンバーがやること、やり方、見直し方が書かれているのが地域公共交通網形成計画というものであって欲しいなと思います。

全国300くらいある計画をみていますと、それがあまり書かれていない計画もありますので、情けないなと思うのですが、書いてある計画もたくさんあります。

会議ではいろんな関係者がそれぞれの立場からいろんな意見を言って、結果として何か一つの方向を作っていくってことを怖がらずやるっていう事が大事。

それを通じて住民代表などの皆さんも最初「お願い」に「評論」ですよ。だけど、最後には実行部隊になっていただく。私もこの鉄道を公共交通を守る、利用を増やすための一人の部員であるというふうになっていただく。これが大事です。
公共交通システムを住民、利用者、事業者、沿線企業、市町村。これは「生活バスよっかいち」にいた人たちですね、この人達が支える。みんな対等に、言いっ放しにせず、できることをやる。それによって地域に信頼関係ができる。利用を増やすためには地域がいい地域でなければいけない。そのためには地域づくりもやる。そうすると公共交通も持続可能になり、それが運んでいる地域も持続可能になる、そういうストーリーです。

言うだけなら誰でも言えます。自分達が欲しいのであれば、自分達が先頭になって頑張るのが当然。しかし、間違っても鉄道を守ること自体が目的になってはならない。
そのためにも「心」「人」「金」「口」この4つをきちんと出していくことが大事です。

で、何ができるか?っていうのを住民の皆さんだってやれることはいっぱいある。これはやっていってこそ、助けてくれる人も出てくるのではないでしょうか。

私の現場で、明知鉄道です。ここは輸送密度が500人切るか切らないかくらい、駅も新設したし、バスは駅で全部接続にした、乗り継ぎできるようにした。そして地域全体でバスに乗って列車に乗って、またバスに乗るとスーパーに行ける、病院に行ける、高校に行けると全部路線を見直しました。
駅も面白くする、イベントも住民向けと観光客向けの二面作戦でやる、案内もきちんと出していく、それから地域参画もいろんな組織を作って動いて貰う。
まるで地域が「共同経営」ですね。

もう一つ、関わった鳥取。ここもJRと500人台の若桜鉄道、バス2社、昔はとんでもなく仲の悪かった2社、それから町村営バス、タクシー、空白地域輸送。全部バラバラだったのを、見てくださいこの、数年前だったら「歴史的和解」っていうタイトルがついていますよ。普通におじさん達が手をつないでるんですが、あれだけ仲の悪かった人たちが、地域の暮らしを支えるためには手をつながなきゃいけないと。これが地方創生じゃないのですか?これが協議会での取り組みから出てくる。
だから網形成計画は作っていかなきゃいけない。

北海道は10個ある。でも鉄道沿線単位でもないし、つまり、鉄道って全然意識していないんじゃ無いの?っていう問いかけをしておきたい。他のところ見てみると沢山(自治体が)書いてあるところ見えますけど、これは鉄道を意識した計画ですよ。この鉄道を残すために自治体の壁なんか関係ないでしょと。乗り越えてみんなでやっていかないと残せないじゃないか。そうやってやってるわけです。

そのためには市町村が主体的に取り組む、都道府県が必要があると認めたときは、複数市町村にまたがるときはここですね、このふたつが頑張ってこそ事業者もサービスを上げ、情報提供し、国もいろいろな支援をしてくれるっていうのが、10年前からある法律が規定したことなんで、こんなことも知らないで「残せ」とか言ってるのは、全く世の中のことをわかっていないという、もうちょっと勉強して貰いたい。

「おでかけ」をしやすくすることは、地域をいきいき、わくわくにするための方法の一つで、IT社会になって出かけなくてもいろんなことができるとしても、おでかけできるのはとても大事なこと、そのためには引っ張り出す、つまり交通機関が乗って楽しい、行き先が降りて楽しいってことが大事でしょ。
それによって生活の質が高まり、地域が豊かになり、そして地域を支える。それが公共交通の存在意義じゃないですか。
そのために地域のさまざまな主体が一所懸命に取り組まなければいけない。その取り組み自体が地域を盛り上げる原動力になる。
地域公共交通を頑張ることで、地域を良くできる。この大事なことを「他人任せ」にしてるようで、地域を良くできることは無いし、誰も助けてくれません。
ここを毎日読んでください。毎日3回くらい読んでください。我が事なんです。

最後に、今ならまだ充分間に合います。北海道の皆様が、鉄道網を自らの手に取り戻し、自らが考え、守り、育て、活かすことで、地域の役に立つ公共交通網の一翼いや、主軸として再生させ、持続可能な地域を支えるありがたい存在にしていくことはきっとできます。

私は敗戦処理もやりますけど、さっきの明知鉄道みたいに鉄道の維持もやっています。必要なことがあれば私も支援しますが、もちろん支援するときは皆さんも覚悟を決めてやっていただくのが条件です。
そうでないと私だけでなく、ほかにも助けてくれる人はいない。それはわかっていただきたいと思います。

ありがとうございました。

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