北海道の交通関係


北海道の交通関係サイト終了のお知らせ

当サイトは終了することといたしました。本件に関しましては以下をご確認ください。
当サイトは2023年12月末で閉鎖することといたしました


気になっている街「豊浦町」

2017/09/25

室蘭本線を長万部に向けて走っていると比較的平野部が多かった車窓が急に山と海に挿まれた狭い場所を通るようになります。洞爺を出てトンネルを潜った次の駅が豊浦です。

この町にはJR北海道の駅が
小幌駅
礼文駅
大岸駅
豊浦駅
と4つありますが、小幌駅は住人のいない人里離れた場所にあり、道路も通っていないので「鉄道でしか行けない」いわば「秘境駅」となっています。JR北海道は豊浦町に対し利用実態の無い当駅を廃止する旨伝えたが豊浦町はこれを拒否し「観光資源として存続」することにしたわけです。町は年470万円程度の管理費を支払って維持するとしています。

さて、今年6月に豊浦町内に唯一存在していた食品スーパーAコープ豊浦店が閉店し、この町には食料品を買える店が基本的にコンビニ以外無くなりました。4100人を数える人口のある町で、中心部にざっと2700人程度は住むはずのこの街で、なぜスーパーが維持できなかったのか、そして、観光目的としてなぜ町民が誰も利用できない駅を維持する必要があるのか、確かめたくこの町を訪れることにしました。

なお、過去には鉄道で訪問したことのある町ではありますが、今回駅以外の場所も見ることから車での訪問としました。


●豊浦町の概要

豊浦町は胆振振興局管内にある人口4100人ほどの町です。内浦湾に面しておりホタテの養殖の発祥であることも知られており、農産、畜産も盛んな地域です。
1970年代に7500人ほどいた人口は徐々に減り、1987年には6200人ほど、現在は4200人を割り込んでいます。
約6割が役場などがある豊浦地区に住み、残りを大岸地区、礼文華地区、大和など郊外地区で分けている状態です。鉄道を利用できる地域がはっきりしているのが特徴で、比較的に狭い集落に固まって住んでいる傾向があります。そのため比較的鉄道利用も多く、豊浦で180人ほど、大岸で20人ほどの乗降があります。豊浦終着の列車が存在することも特徴です。


●小幌駅維持に関すること

豊浦町にとって小幌駅はどのような駅なのか。
・もともと利用を想定していない「信号場」
・住民0のため、町民の利用客は皆無である
・町はJRの廃止打診以前にこの駅を観光資源としてPRしたことは無い
つまりは、町にとってこの駅は何の価値も見いだしていなかったわけです。
廃止の打診後インターネットサイトでの秘境駅ランキングや廃止反対のマニアの声などを感じることとなって廃止反対に転じ、今更ながらに活用の道を模索し始めます。

年間の維持管理費は470万円。これは除雪費用、そして繁忙期に発生する警備員の人件費。JRとの駅存続協議は1年更新で、今後も更新する場合はホームの改修なども町の負担になることからこれ以上の負担になることは明白なことです。

町はクラウドファンディングで小幌駅存続のための寄付を募り、初年度に940万円ほど集めたものの、翌年は150万円程度に留まり、廃止されないとわかってからのマニアの関心は薄いわけです。


●心配な豊浦町民の「買い物」

豊浦町では今年6月、町内中心部にある唯一のスーパーマーケットAコープ豊浦店が閉店しています。このスーパーは1970年開業、以前はもう少し大きかったと思われますが大店法規制問題があったと思われ500平米ほどの店舗面積でした。
日用品、生鮮品を扱い、農協店舗であることを活かした農産品には一定の定評があったものと思われます。

現在豊浦市街地で営業する食料品扱い店舗は
・セイコーマート やじま豊浦店(6:00-0:00)
・セブンイレブン豊浦旭町店(24時間)
・ホーマックニコット豊浦店(9:00-20:00)(旧ツルヤ豊浦店1995年開業)
の3店舗になります。

いずれも一定の日用品、生鮮品の入手ができますが、食品スーパーでは無いことから金額面、品揃えで必ずしも満足できない可能性があるわけです。また、国道ロードサイド店であることから比較的市街地から遠く、最大で2kmほどの距離があることも徒歩では難しいことになります。

では、豊浦町民は日用品、生鮮品をどこで調達してるのでしょうか。豊浦町が今年行ったアンケート調査では、町民の70%は買い物先に伊達を選び、細かい買い物はコンビニを利用。買い物にクルマ利用が74%、家族送迎も含めるとほぼ徒歩での買い物は行っていないことがわかります。
豊浦町民の生活及び買い物に関するアンケート調査報告書
https://www.town.toyoura.hokkaido.jp/hotnews/files/00002900/00002970/20170310173743.pdf

ただ、伊達市内まで買い出しを行うと考えると、20km程度の距離がありますので、車としても毎日の買い物は厳しいのではないかという印象を持ちます。洞爺湖町のスーパーも30%程度(複数回答)の利用はあるものの、距離の割に少ない印象です。店舗数が複数あり規模の大きい伊達市内のスーパーへの週毎の買い出しが多いのでは無いかという印象です。

豊浦町は車を持たない高齢者らの足として「無料買い物バス」の実証実験を7月から行っています。上記の食料品扱いの3店舗と、同様に食品を扱う道の駅、豊富温泉しおさいを結ぶものです。しかしながら、このアンケート結果を見る限りは買い物バスでは住民は満足できないということになりそうです。

しかし、これでは豊浦町内で金が回らないということになるわけで、税収面を考えても非常に問題が大きいと思うわけです。

●現地に行ってみた

さて、9月23日に現地を訪問してみました。駅の駐車スペースに車を置いて、まず、徒歩で駅から豊浦温泉しおさいまで歩いてみます。
フォト
フォト
フォト
駅内には集会所と喫茶店が入っており、平日のみ営業。喫茶店で簡易委託の乗車券を発売しているはずです。伊達紋別方面へのバスも乗り入れていますが本数は少なく、特に土曜、休日は日中の便はありません。

フォト
フォト
フォト
駅前には既に営業していない個人商店があります。過去にはそれなりに賑わっていたのでは無いかと思わせます。このような町でも比較的床屋は残っているのは、食品よりも床屋はなじみの店でという人が多いこともあるのでしょう。
坂を下りて神社に。豊浦神社と金刀比羅神社が同居しています漁師町らしい神社ですし、境内からの海の眺めも素晴らしい神社です。

フォト
ここから急に道幅も広くなり「大通」な雰囲気。新しめな建物や飲食店などがあり、伊達信金の店舗などもありますが、やはり商店は見当たりません。豊浦町地域交流センターから海側に行くと「しおさい」です。

フォト
フォト
フォト
豊浦温泉は船を模った外観が特徴。ふるさと創生事業で温泉を掘り、2002年にこの建物になったはずです。一時期経営不振で加森観光へ委託となったはずですが、現在はどうなんでしょう。

この温泉施設でも食品を扱ってはいますが、あくまで観光客向け売店に追加という感じですので、食品としての品目は少なく、ここを日常の食品購入で使うのは厳しそうです。

フォト
フォト
フォト
坂を上がり、豊浦町地域交流センターを越えると閉店したAコープ豊浦店が見えます。閉店のお知らせがまだ貼ったままになっており、向かい側の金融店舗の方は営業しているように見えます。

フォト
そのまま坂を上ると室蘭本線の踏切、そして国道37号線です。ここから約100m先がセイコーマートやじま豊浦店です。規模的にはそれほど大きくなくホットシェフはありますが、ATM等のない店舗です。セイコーマートは比較的生鮮品を良く扱うコンビニではありますが、コンビニはコンビニですので、肉類、魚類はそれほど多くは販売されていません。

セイコーマートの裏手が小学校、中学校、認定こども園など教育施設が集まっています。豊浦町は中学校を1校に統合しており、小学校も3校まで減らしています。子供の数の減り幅は比較的少なく、小学校、中学校とも1学年20人程度確保されています。なお、豊浦町ファミリースポーツセンターにはD51 953が保存されており、訪問した日に修繕作業などを行いお披露目だったようで、近くを訪問したのに行かなかったのは残念。ちなみにこのSL、胆振縦貫鉄道が製造した私鉄機で、その後国鉄に編入されたという経歴がある異端機です。

フォト
フォト
フォト
車は通れませんが、このあたりと海側の地区を結ぶ国道、鉄道を潜る地下道があります。戻ると役場前です。役場前のバス停で「お買い物バス」の運行を確認。そのまま歩くと駅へ戻ります。

歩いた印象ですが、高齢の方が車を運転する姿を非常に多く見かけています。交差点、特に踏切での一時停止が確実では無い、歩行者横断中に交差点進入するなど、少々目に余る運転も少なくありません。また、買い物の手伝いなのか、高齢者が袋を持っており際に運転者に挨拶する場面も見かけています。いずれも食料品の入手さえ町内でできない事が起因と思われ、かなり厳しい一面を感じます。

バスの少なさもありますが、豊浦駅の構造もどの列車に乗っても降りても跨線橋を通らなくては利用できず、高齢者にはかなり危険に感じます。当駅の場合貨物列車待避もあるので構内踏切では解決できないこともありますが、現実にエレベータなどを付けられるほどの需要も無く、これの解決は難しいところです。

フォト
このあと車で国道沿いのホーマックニコット豊浦店へ訪問してみましたが、食料品は比較的充実しています。パン、飲料、農産品や冷凍食品も扱っており、少ないながらも弁当などもあります。肉、魚はやはり多くはなく、元がホームセンターだけに食料品の種類は多くない印象です。それでも最低限の買い物はここでも可能と判断されたからこそ「お買い物バス」をここに経由させるものとは思われます。



●豊浦町の「将来」

洞爺湖町との合併を住民投票で否決し、単独で生き残ることを模索している町ですが、個人的にはそれほど住みにくい印象はありません。意外と街の中で子供を見かけることも含め、伊達への交通機関さえ維持できれば高校までの進学に不自由もありません。なにより国道も鉄道も幹線筋ですし、高速道路も町内から比較的アクセスしやすいというのは大事なことです。

しかしながら、その車でのアクセス良好さが、地域の交通機関への関心と、地域の食料品店の維持という「当たり前の問題」から逃げ出している印象を感じます。
本来必要なのは町民が誰も使えない駅の維持ではなく、町民が使う交通機関の維持と町民の食のための店を維持することです。
人口規模から店舗面積を狭めた形の食料品店は建物などの費用をある程度自治体が面倒を見ることで進出できると踏んでいます。災害の多い地形もありますし、場合によってはある程度の道路寸断なども考慮しなければならないだけに、食品店を持たないというのは不安を感じます。そういう意味では住めない町です。

また、交通に関しても以前策定した協議会が機能しておらずJR、道南バス、町営バスと福祉関連バスがバラバラに走っている現状が続き、このままではバスの撤退も考えられる緊急事態ですが、町にその意識は薄いように考えられます。大岸、礼文華地区に関しても、食品扱い店が少ないことを考えると、移動販売等の仕掛けは必ず必要となりますが、それを民間の力だけでやろうとするには今の豊浦町では難しいでしょう。だからこそ、自治体がもう少し自分のこととして町の将来を考えなければなりません。

あと10年もしたら車を運転できない、もしくは車での事故なども考えると、町の機能を維持することすら難しくなります。特にスーパー問題は協議が進んでいるように見えないだけに心配です。



●小幌駅問題

昨年から行っている小幌駅を利用したツアーに関しては。札幌からバスで豊浦へ、鉄道で小幌を往復しまたバスで温泉なり道の駅への旅です。モニターツアーとして価格が抑えられていることもありますし、地元が手厚くもてなすこともわかりきっていますから参加者も大いに楽しめたと思います。しかし、ちょっとまってください。
バスでやってきた客にわずか片道350円の運賃、しかも団体割引させるような。そんな利用で駅を維持できるのですか?というそもそもな疑問を町は考えないのかということです。

最近の新聞ではJRは小幌駅を訪問できる便が少なく観光客が他の施設に行きようが無いのをなんとかするべきだといった、なぜかJRに頼る意見が出てくるわけです。

駅を維持したのは豊浦町です。ならば、その駅に来て貰うことを考えるのは豊浦町の責任です。JRと交渉して豊浦止まりの列車を時刻変更書けてでも折り返し運転できる(はずの)静狩まで延長運転して、利用できるようにするのも、町とJRの話なんですよね。極端言ったら特急臨停させたっていいんですから。それだって「交渉」でしょう。

結局自分達の駅という観点が「自腹を払ってすら」考えられない悲しさを思うわけです。どこかいまでもJR北海道を「敵」と認定し、それを使わせたくない、でも客は欲しいという矛盾がそうさせているわけです。JR発足から30年小幌駅に対して何もしてこなかった豊浦町がちょっとやそっと頭ひねったところでろくなアイデアが出ないのはわかりますが、あまりにも残念な、情けない話であります。
(教育委員会は岩屋観音について過去から副読本などで活用しており、町は決して小幌駅の存在を知らなかったわけでもなければ、利用してないわけでも無い。町内で岩屋観音巡りツアーをJR利用でやってたくらいなので。しかし、観光としての観点は2013年の時点まで一切発見できなかった。マニアのブログだけが頼りというのは観光地とは言わない。さらに遡ればJR北海道が車内紙「The JR Hokkaido」で小幌を紹介したのは1992年の話。そのときですら豊浦町は梨の礫であったことを記しておきたい)

ただ、個人的には小幌駅をこのまま廃止しないという決断自体は悪くは思っていません。降りるだけで遭難する可能性のある冬期はともかく、ここを降りたことで、鉄道でしか行けない内浦湾の手つかずの地域を見ることができるのはそう悪い話でも無いわけです。だからこそ、町が本気で維持するなら駅から国道への最低限の道路整備、海側からのアクセスが可能な簡易港湾整備などもふくめて管理し、豊浦温泉を組み込み札幌-函館のほぼ中間であることを活かしたルート構築を考える必要はあります。そのためには周辺の伊達や洞爺も含めた地域での観光誘致に勤めなければならないのです。

洞爺、登別を満喫した客に、2回目はそこじゃないスポットを紹介できるようにしなければなりません。それにはJR任せで本数が無いから客来ない、行けないとか言っている場合では無いのです。



いずれにしても、今後豊浦町のニュースはチェックしていきたいところです。

おまけ。大岸駅の駅前には商店がある
フォト
フォト
礼文駅までの道路沿いには旧線トンネルが今も口を開けている
フォト
フォト


(コメント追記)
>84歳運転の車 スーパー店内に突入 伊達
> 【伊達】22日午後3時20分ごろ、伊達市梅本町の「スーパーアークス伊達店」で、胆振管内豊浦町東雲町の無職男性(84)の軽乗用車が店の正面出入り口に突っ込んだ。店内で買い物をしていた同市末永町の無職女性(77)が頭や腰などを打ち、軽傷を負った。男性にけがはなかった。

これ、7月22日の記事。もちろん極端な例なんだけど、地元にスーパーが無いということは、こういう事故に関してある程度寛容になれという意味でもあるんだよね。まぁ、他地区に突っ込むか、自分の町のスーパーに突っ込むかの差とも言えるけどさ。

北海道の交通関係 JR北海道 人口減少

検索入力:

記事カテゴリ