北海道の交通関係

なにかがおかしい「日高線BRT・DMV・バス試算」

2017/11/16

2017年11月14日に行われた「JR日高線(鵡川~様似間)沿線地域の公共交通に関する調査・検討協議会」にて、学識・有識者の監修を受けた「調査報告書(案)」が提示されました。協議会はJR北海道が示した鉄道の復旧費用負担に反対し、廃止提案も拒否することで「自分達で検討する」ことを目的に作られた協議会です。4月に設置され7月に会合、10月に東北BRT視察を行っています。
そしてDMVやBRT等の交通モードも含めた運行システム導入についてコンサルタント会社(ドーコン社)に試算を求めており11月に発表という形で進んでいました。

今回の会議には以下の方が参加した模様です。
日高管内7町長(日高・平取・新冠・新ひだか・浦河・様似・えりも)
北海道日高振興局:山口修二局長
国土交通省北海道運輸局:佐藤秀典鉄道部長
ドーコン:山本一彦総合計画部長
北大経済学研究院:吉見宏教授
北大工学研究院:岸邦宏准教授
元エアドゥ代表取締役副社長・太平洋金属:小林茂監査役

本会議については、11月16日現在以下の媒体で報道されています。(1週間程度は記事を閲覧できるものと思います。私のサイト内「北海道交通関係報道」にリンクがあります。
なお、記事のタイトルは以下の通りです。
●2017年11月14日 HTBニュース 「鉄道に代わる公共交通機関の費用報告 JR日高線」
●2017年11月14日 北海道新聞「日高線代替、BRTなら100億円 コンサル報告 バス転換は3億円」
●2017年11月15日 日高報知新聞「BRT、初期投資約105億円」
●2017年11月15日 NHK 「日高線沿線自治体の会合」
●2017年11月15日 北海道新聞 「日高線代替報告書 沿線町長ら議論」
●2017年11月15日 苫小牧民報 「BRT整備に100億円超 JR日高線沿線地域の公共交通に関する調査・検討協」
●2017年11月15日 日本経済新聞 「日高線の代替交通コスト、BRTは105億円」

この会議は冒頭を除き非公開で行われました。今回も含め公開で行われた会議は無く、私たち外部の者は市民であっても、議員であってもその内容を直接知ることはできません。ということで報道内容が重要になってきますが、多くの媒体はその金額だけを記載しています。
例えばNHKは「14日の調査報告によりますと運用にかかる初期費用はBRTでは105億7千万円、DMVでは47億1千万円、バスでは2億6千万円という試算になったということです。さらに運行を始めるまでの期間はBRTが6年、DMVは14年、そしてバスは2年と分析しています。」
これでは内容が全くわからず、バス転換が安いんだねという話になりますし、私としては2.6億円では「バスそのものの購入もできないではないか?」という疑問を覚えます。

比較的詳しい記事を掲載したのが地元苫小牧民報と日高報知新聞です。この2紙の内容を統合しますと以下のようになります。

●前提条件(区間)
・DMV 鵡川-(鉄路)-日高門別-(一般道)-静内-(鉄路)-様似
・BRT 鵡川-(専用道)-日高門別-(一般道)-静内-(専用道)-様似
・バス 鵡川-静内-様似(全線一般道)

●前提条件(運行本数)
 鵡川~静内間16本・静内~様似間14本(現行代替バスと同数)

●前提条件(定員)
・DMV 26
・BRT 58
・バス 58

●初期費用として含むと思われるもの
・DMV(47.1億円)
 駅・停留所
 線路部
 車両開発費(10億~20億円)
 車両導入費(20.9億円)
 運転士の免許費用
・BRT(105.7億円)
 駅・停留所
 バス専用道(線路をバス専用道にする工事費用93.7億円)
・バス(2.6億円)
 車両導入費
 停留所

●運行開始までに要する期間
・DMV(14年以上)
 車両開発に2年程度・製作に8~9年
・BRT(6年以上)
 計画期間と施設整備にそれぞれ3年
・バス(2年)

●単年度収支
・DMV(9.5億円赤字)
・BRT(5.2億円赤字)
・バス(1.8億円赤字)
どの代替交通案も被災箇所の路盤改修や海岸の浸食対策が必要で、単年度の収支は赤字を見込む

●検討事項
・DMV
 事業主体、運行管理体制の確保
 バリアフリー法に対応した車両開発
 安全性の事前確保
 4台続行運転に対応する運転保安システムの安全性確認
・BRT
 事業主体の確保
 高速性を生かせるルートの検討・確保
・バス
 事業主体の確保
 既存のバス路線とのダイヤ調整

これを受けて
北大吉見宏教授:「前提条件によって開発期間や費用は変わる。それぞれの交通手段の特色を踏まえ、地元主体で検討してほしい」
酒井新ひだか町長:「JR日高線が走っていたときの状況を代替するというのが条件で、DMVは車両を用意するのに、BRTはレールや枕木を外して100㌔以上を舗装するため、費用や時間が掛かる積算になっている」「日高が単独で結論を出す形にはならない。日高線はJR北海道が単独では維持が困難と表明した10路線13区間のうちの一つなので、他の12区間の動向を見ながらの着地になるのでは」
とコメントしています。


さて、ここまでまとめた印象なのですが、あくまで個人的に残念なことは「日高の公共交通ネットワーク全体の在り方について調査・検討する」というのがこの会の設立目的であるわけで、既存の交通機関との関わりについてバスのダイヤ調整くらいしか出てこないことで、利便を高めるのだという観点からの検討では無いことが上げられます。
もちろん、前提条件を一致させての運行媒体比較という面から致し方ないものでありますが、せめて今の1.5倍程度の便数(1時間おき等)の確保での試算などがあっても良さそうに思うところです。
また、金額と前提の条件が等しくないのでは?という疑念です。
DMVには車両開発費用と導入が盛り込まれています。四国での導入検討があり14年という歳月が本当に必要なのか検討したのか?やバリアフリー車に関しても既存の小型ノンステップバス(マイクロバスとほぼ車幅が変わらない)改造などを考慮しているのかも含めてかなり未知数です。(これは四国ではどう考えているのかという話もある)
また、軌道、信号の整備費用についてほとんど考慮されていないという印象を持ちます。
BRTとバスの車両導入についてはっきりとした記載が無いのですが、特にバスの2.6億円は大型路線バス車両なら5台程度しか導入できず、バス待合室の整備などを考えると本当に車両費が入っているのかすら怪しいと言わざるを得ません。
BRTについても、鵡川-日高門別・静内-様似として85.2km、単純な舗装費用で20億~40億程度、設備撤去やバス停、駅改修という意味での高額はわかりますが、東北地域のBRTに比較しても若干安い印象があります。(車両が含まれているかいないかで大きく変わる)

そういう意味でも吉見教授の「前提条件で変わる」発言があるように思えます。

また、ランニングコストについて、現行のJR北海道がこの区間で赤字額を3.6億円と公表しており、バス転換でこれが半額になる点でも疑念があります。もちろんある程度既存バス「路線」として行うことで、補助金投入等を考慮している可能性はありますが、試算的には既存バス路線とは独立しているようですので、不思議さがあります。

また、DMVでは考慮している人員教育の話。現行と全く同じ形でバス転換するにしても、現在の観光バス4社+ジェイアール北海道バスへの委託をそのまま継続することはできませんので、人員確保が必ず必要になります。その点についてどの程度触れられているのか。

いずれにしても人件費、信号システム、駅や停留所の設備も含めて、単純な報道だけの内容ではありますが、疑問が多々あります。ドーコン社は建設コンサルタントとしては実績がありますが、沿線自治体からだされた前提条件も含め、かなり「無理のある」試算結果と言わざるを得ません。

最終の調査報告書が来月中に公表されると発表はされていますので、それを待ちたいと思います。

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