北海道の交通関係

苗穂工場公開とあびら道の駅を見てきました

2019/09/09
JR北海道の苗穂駅に隣接する苗穂工場はJR北海道の車輌を修繕、改造などを行う「車両工場」であります。鉄道車両は定期的に検査、修繕が行われ、1両あたり長さ20m以上、重さ50t近くになる巨大な車輌ですから、それを修繕のために解体するにも巨大な「工場」が必要になるわけです。そして部品単位で修繕を行いまた組み立てられて走るわけですから、その範囲も広く、敷地も従業員の数も非常に多い施設でもあります。
その起こりは1909(明治42)ですから110年を迎えるという施設になります。蒸気機関車時代はそのもの蒸気機関車の製造をおこなっていたり、1980年代は急行や特急用の気動車からリゾート列車を改造制作するなど、その技術力の高さを誇っています。

苗穂工場公開とあびら道の駅を見てきました

以前から年1回隣接する苗穂運転所、研修センターとともに一般公開され、ファンだけで無く地元の方も数多く来場する一大イベントでした。研修センターの手稲区移転などもあり現在は苗穂工場敷地内だけの公開となっています。昨年は北海道胆振東部地震で中止となっており、2年ぶりの訪問になります。

展示内容

苗穂工場では数多くの施設建物がありますので、あまり欲張っても大変なのですが、
苗穂工場公開とあびら道の駅を見てきました
デザイン・エクステリア関係展示
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エンジン施設でのエンジン展示、性能試験展示
苗穂工場公開とあびら道の駅を見てきました
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台車、車輪関係施設の展示
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車輌改造等の展示
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機関車等の移動式クレーンでの持ち上げ下ろし
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車輌修繕施設での車輌入れ替え
苗穂工場公開とあびら道の駅を見てきました
車両展示と体験乗車
に大きく分かれましょうか。
以前はレール溶接などの展示もあったように記憶しますが、他部署の協力を得にくくなってるのかもしれません。

今回はリゾート列車等の減少を受けてイベント・普通列車兼用として改造されたキハ40形の「山明」の展示が目玉でしょうか。また、列車引出トラバーサ動作では新形普通列車用車両H100形が短時間ではありますがお披露目されたのも特記されましょう。

また、工場内ツアーも行われましたが、こちらは参加しませんでしたので、また、別な車輌を見ることができたかもしれません。


感想

毎度思いますが、鉄道というのはこれほどの広い施設を有しなければ運営できないということが挙げられます。道路を走るクルマでは考えられないほどの精密さでの修繕、例えば変速機の歯車まで解体しての整備はクルマではなかなか無いことでしょうし、それだけの過酷な運用を行うというのが長距離を抱える鉄道の姿でもあります。
これを事業者が負担して維持し、従業員を抱えなければならないわけですから、鉄道というのがどれだけ高コストになるのかというのも理解できるところです。
この整備は当然他に委託することが困難なわけですから自社でやらざるを得ません。バス会社が自社で整備するというのとわけが違うわけですね。

また、ブレーキシューに使われる鋳物も自社製。苗穂工場以外ではJR東日本に1箇所だけといいますので、かなり特殊な設備です。電炉と専用の搬送装置を使う非常に大がかりな装置ですが、これも他に売る量は多くなく、ほとんどが自社消費分。つまりそのコストはほとんどJR北海道が持っているわけです。この特殊なブレーキシューは寒冷地下で性能を維持する意味でも他の会社では使用していないもので、これだけでも大きなコストアップ要因です。もちろん本州用のレジンが含まれるブレーキシューは使えるでしょうが、厳冬期の性能劣化があるわけで、北海道の鉄道が安定して走るためには必要なコストでもあります。
苗穂工場公開とあびら道の駅を見てきました
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そして、前回も思いましたが建物の劣化は待ったなしという印象を憶えます。明治時代に作られた建物すら残るような状態で、これは岩見沢のレールセンターもそうなのですが、耐震問題も含めて、施設の近代化を進める必要はあるとも思うところです。本来なら施設をどこかに移転するというのが望まれてはいるのでしょうが、跡地問題も含めて進んでいないのも現状です。また、内部の機器も昭和40年代の国鉄時代に整備されたものが数多く稼動しており、季節的にちょうど良い時期なのでこれで済んでいますが、夏場の暑さ、冬場の寒さは職員の業務環境も悪いのではないかという印象を持ちます。

エンジン、変速機整備の現場では展示してあるエンジンだけでも6種類以上、実際には10種類以上のエンジンを使い分けています。電車列車のモーターも数種類を使用し、今も整備の手間の多くかかる直流モーターを使用する車輌があります。2013年頃のJR北海道の不祥事の多くはこの多品種を滞りなく整備することが経験者の不足に伴い難しくなり、なおかつ予備部品等のストックも多大になり管理の手間を産むこと、それを減らされた少人数で行わなければならないことでの作業ミスなどの問題も指摘されていたかと思います。

昨今の旧型車輌の淘汰、車両や設備の画一化はこれを軽減することに繋がります。大量の車輌を抱える首都圏と違って同時発注のスケールメリットが少ないことから、同系列でも非常に多くの差異がある車輌をしかも混結して運用しなければならなかったJR北海道の各現場の皆さんは本当に大変だったろうと思うわけです。そしてそれに使用する部品も「在庫」しなければならないわけで、何かを購入すれば資産として算定される現状の減価償却の考え方からすると、予備部品や余剰在庫も多く抱えられません。しかし、その部品が無ければ修繕することができませんから部品を車輌の種類毎に抱えなければならないわけです。

今後普通列車用気動車H100形でシステム的には「電車」に近くなることは相当な工数削減に繋がることは見て取れるところです。また、以前と違い新形のエンジンはエンジン自体の解体整備を行わないと思われますので、そういう面でもコストを削減しようという観点があるものと思われます。

旧態同然な食堂でご飯を頂くのもこちらを訪問する時の楽しみ。食事自体は美味しいですが、広い食堂に空調設備は非常に少なく、夏季は扇風機だけという状態。福利厚生に予算をかけられないのもわかりますが、あまりにも従業員の皆さんが不憫でならない。赤字なら給料を下げよと言い放った前知事など「識者」と言われる人は当然このような公開の場すら訪問することはないでしょう。鉄道は見える範囲の設備だけでは決して動かすことができない事を一体どれだけの人が考えて発言しているのか。

もちろん私自身もこんな公開の場だけで何かを判断し発言することには躊躇いもありますが、これだけの施設を有さなければ「鉄道」というものが維持できないということは、やはり発信していかなければならないことだとも思うのです。そしてJR北海道が整備施設を持っているから、道南いさりび鉄道にせよ、札幌市電にせよ一定の整備委託をでき、コストを削減できるとも言えるわけです。



道の駅あびらD51ステーション

翌日は思い立って安平町追分地区にある道の駅あびらD51ステーションを訪問してみました。2019年4月にオープンし、町内で保存されていたSLであるD51とJR北海道から譲渡されたキハ183系特急気動車を展示しています。追分は夕張や室蘭などへの石炭列車の機関車を抱えていた追分機関区があったことで鉄道の町として発達した歴史があります。
苗穂工場公開とあびら道の駅を見てきました
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今も国鉄OBが保存されているD51を、火こそいれていないものの構内移動が可能な状態に整備されています。通常は屋内で展示されている機関車を土日日中は外まで引出し、展示しているわけです。同様に屋外展示されているキハ183とともに並んで展示されている様は他の道の駅では見られない風景でもあります。
苗穂工場公開とあびら道の駅を見てきました
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安平町が道の駅の目玉としてD51に目を付けたのは当然で、これが無ければ「ただの道の駅」なわけです。北海道に数多くある道の駅それぞれが特色を出して集客に知恵を絞っています。道の駅の間隔が10km程度なんて場所もありますので、快適だったり美味しいものが食べられるとか何か理由が無ければスルーされてしまう可能性もあるわけです。現に様々な理由で休止になっている道の駅もありますので。

安平町も、道の駅としての設備は他の町とそう多く変わりません。食堂やパン屋、ソフトクリームが買えるスペースに休憩スペース、地元食材の販売スペース、綺麗なトイレ。ここまでなら他と変わりません。大きく違うのはここにD51がいる。そしてそれがちょっとの範囲でも動く姿が見られるということです。

そして、クラウドファンディングで移送費用を募集したキハ183系も国鉄時代の塗装を纏って置かれることになりました。車内の見学も可能で、特定の日には運転室、機器室の見学も可能とのことです。
苗穂工場公開とあびら道の駅を見てきました
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このような展示を道の駅としての一定の予算を使って維持していけるなら素晴らしいことです。SLに懐かしさを思う人も多々いるでしょうが、この国鉄形気動車に懐かしさを思う人もいるわけです。タイミングが合い、この車両が展示されたわけですが、逆に言いますと、他の車輌はなかなか保存されないという部分でもあります。

国鉄末期に廃止になった路線のいくつかに旧国鉄が車輌を譲渡していますが、朽ち果てて哀れな姿になっている車輌も決して少なくはないのです。

そして、追分には以前機関車を保存していた鉄道資料館がありましたが、これが現在道の駅に移転した形になっています。以前の資料館は立入禁止となっており、構内には北海道形の客車であるスハ45が置かれたままになっています。この車両もSL移設時に若干別な場所に移動していますが、この車両をどう活用するかは特段見つけることができませんでした。また、もう1両キハ183が資料館内にいるようです。
苗穂工場公開とあびら道の駅を見てきました

道の駅でキハ183を見た客が懐かしい、昔乗った、今は鉄道使わないけどという会話をしているのは残念なところです。もう鉄道は「見るもの」になってしまったんでしょうか。現役の列車を守る施設と、非常に賑わう引退した列車の展示施設の差を改めて感じた次第でもあります。

カテゴリ: 北海道の交通関係 JR北海道 苗穂工場 あびら道の駅 保存鉄道

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