北海道の交通関係

バス乗り継ぎへの抵抗を少しでも抑えるには

2019/10/09

先日からしばらくTwitter上で気になるやりとりがありました。夜行高速バスが渋滞で遅れ、乗り継ぐ予定の別の高速バスに乗り継ぐことが難しい状態になった時に、運転手さんが機転を利かせて乗り継ぎのバスを停めて無事に乗り継げたというものです。

Jタウンネット
「お客がいるんだ!頼む!!」 高速バス運転士の神対応に反響...当時の心境を本人に聞いた
https://j-town.net/tokyo/column/gotochicolumn/295816.html
>ことの始終は、会津若松(福島県)から「バスタ新宿」(東京都)へ向かう「夢街道会津号」(ジェイアールバス関東)で起こった。
>すると運転士は無線を持った人に、
「おい!悪い!福山便あと5分だけ止めてくれ!お客さんがいるんだ!頼む!」
と窓を開けて呼びかけたという。また、車内に向けて、
「すみません、広島便のお客様を先に通してあげてください、すみません」
とも。そして皆、乗り継ごうとする乗客を先に通した。降車したのち、無事にバスタ新宿の停留所へ向かっていったという。


あくまで記事からですが、ポイントは2つあって
1 「広島便乗り継ぎの方が電話をしても時間外で連絡がつかずキャンセルもできず」という問題
2 利用者が選択した会津若松-バスタ新宿20:29/バスタ新宿21:05発エトワールセト号の乗り継ぎは適正かという問題

1つ目の問題は夜行便の運行に際して問い合わせ受付時間が中国バス予約センターが18時まで、小田急シティバスが19時までと、便出発時刻付近で利用者の問い合わせを受けることができないことですね。

2つめの問題はバスタ新宿での乗り継ぎ時間。30分あれば余裕だろうと思うのか、30分しか無いから大丈夫だろうか?と思うか。会津若松から東京へのバスは今回選択の16時の便の前が15時発の東京駅行きなので新宿に行かない、その前の14時半発がバスタ新宿着19:14で「早すぎる」と思った可能性はあるでしょうか。バスタ新宿は降車フロアが3階、乗車フロアが4階と分かれていることもありますし、乗り慣れないと定時刻に到着しても、ちょっと怖いかな?という印象があります。まして日曜日の東京行きの便ということでバスは渋滞にはまり遅れる可能性が高い。手前の王子駅や池袋駅で降車した場合も混雑する中を鉄道からバスタ新宿まで移動できるかは微妙なところです。

今回の利用者が30分の余裕があれば良いと思ったことは、逆に乗り慣れていないという印象を持ちますし、前後の用事によってはこれを選択せざるを得なかったのかもしれませんから、誰かを批判することもありませんが、今回はうまく行っただけで、次回はダメかもしれません。そして何とかそれに応えようとした運転手さんは賞賛しますが、これとてたまたま「運」の問題でもあるわけです。


さて、今回の記事ではこれを取り上げたかったわけではないのですが、バスという一定の遅れ、早着が発生することが避けられない交通機関を利用して「乗り継ぎ」を行うことを、もう少し考えたいよねという部分です。

前回の記事で書いたとおり、釧路ではイオン昭和でのバス同士の乗り継ぎを行うことで、バス運行の効率化を図り、バス路線を維持していく方法の一つとしたいということがありました。しかし、今まで直通していたバスを、乗り継ぎに変更するということは、バス同士が確実に乗り継げなければならないとも思うわけです。これについて、釧路市の広報や各バス会社の時刻表等をチェックした限りは、バスが遅れを待つという記述がありません。地方へのバスは1便を逃すと2時間3時間間が開くことも珍しくなく、設定された最小の乗り継ぎ時間は3分です。釧路の場合は他社のバスに乗り継ぎ割引券が使えないようなので、これを逃すと約2時間便はありません。同じ会社なので乗り継げるんです!と言うならば当然それを時刻表なりわかりやすい場所に表示しなければなりません。


このような路線短縮による乗り継ぎに関してはジェイアール北海道バスの札幌圏でいくつか行われています。これは、特に冬期における札幌市内の渋滞が慢性化して遅延が激しく、途中のターミナル停留所である大谷地ターミナル(地下鉄大谷地駅)や新札幌駅(地下鉄新さっぽろ駅)から乗車する場合に遅延したバスを待ち続けなければならない。その到着時間も読めないという問題があったためです。
2007年には札幌駅-大谷地ターミナル-長沼方面への便を全て大谷地ターミナル発着に変更しています。また、2015年にはそれまでも少しずつ減らしていた札幌駅-新札幌駅-江別方面の直通便をごく一部を除き新札幌駅発着に変更しています。
この途中乗り継ぎ点を超えて利用する客にとっては不便になったものの、新札幌駅はショッピングセンターや医療機関が集積し、地下鉄やJRに乗り継ぐことが可能なこともあり、むしろ遅延が少なくなり利便が高まった点もありました。
新札幌乗り継ぎに関しては互いに初乗り運賃がかかることを避けるために「新札幌乗り継ぎ乗車券」を新設しています。これは4枚綴りで新札幌降車時、目的地降車時にちぎり投入することで直通と同じ価格で利用できるものです。例えば札幌駅-新札幌駅乗り継ぎ-厚別東小学校なら乗り継ぎなら450円になりますが、直通なら240円ですので、この運賃で利用できるよう発行されるものです。


ジェイアール北海道バス
2013.12.1ダイヤ改正
http://web.archive.org/web/20140330111541/http://jrhokkaidobus.com/pdf/dia_201312.pdf
(WEBアーカイブ上にあるもの)



さて、接続相手が地下鉄となる大谷地ターミナルはともかく、バス同士の乗換も想定する新札幌駅での運用を見る限り、札幌駅-新札幌駅のバスと新札幌駅-江別駅方面(大麻11丁目なども含む)のバスが接続待ちをしているようには見えません。極端を言えば比較的日中の本数が確保されている両系統では渋滞が発生する日中は接続を行わず、「乗れる便に乗る」というコンセンサスが乗客の間にできているようにも見えます。(もちろん細かな不満はあるのでしょうが)

札幌市内では、ジェイアール北海道バスの手稲・小樽方面でも長距離便を中心に宮の沢駅での乗り継ぎでの運行が行われていますが、宮の沢駅を経由しつつ直通する運行、また、宮の沢駅自体を経由しない運行も少ないながらも行われていて、これは新さっぽろに比較すると宮の沢自体に用事のある利用者が少ないことも挙げられるかもしれません。また、JR手稲駅での鉄道乗り継ぎも想定した運行形態がとられています。

北海道中央バスが行っていた札幌ターミナル(札幌駅北口)-地下鉄麻生駅-屯田方面の直通バスの麻生駅発着の短縮運行への変更は結局1999年と2000年の2シーズンで中止しています。こちらは地下鉄並行路線である札幌ターミナル-地下鉄麻生駅の全便を休止するという大胆な試みでしたが、直通客だけでなく、この区間内の利用もあり、住民要望もあって復活しており、その後は行われていません。札幌都心部-麻生は距離が短く、地下鉄による速達効果があまり望めない部分があるとも言えます。
地下鉄福住駅系統では地下鉄開業時に一部の便は短縮したものの、現在のところ都心への直通便は比較的多く運行されたままになっています。完全に都心直通便を廃止したのは北広島便くらいでしょうか。真駒内方面でも真駒内駅発着への短縮が行われ、豊平川沿いを走る都心直通路線は廃止となっています。
これら中央バス路線は全般的に地下鉄との乗り継ぎを想定しており、バス同士の乗り継ぎを想定しているような便は札幌市内に関してはほぼありません。

札幌市交通局は地下鉄とバスを乗り継ぐ場合に80円(100円)運賃を割り引く乗り継ぎ割引制度を取っており、対象駅で地下鉄とバスを乗り継ぐとSAPICAなどのICカード乗車券では自動的に適用されます。また、直通定期券も発行されます。しかし、バス単独であれば210円または240円の特殊区間内であればバス単独での直通便は安価に移動できるため、短縮には反対意見が多く見られることになります。未だに札幌都心からあいの里教育大方面など240円で20km近くの長距離乗ることができる系統が存在しますが。このような便を存置することは非効率にもなりますし、著しく不公平感があるのも事実でしょう。この距離なら市外への路線なら700円近くの運賃になると思われます。また、手稲区や南区など特殊区間外の住民の特殊区間内への併合運動も一部で行われています。
札幌近郊の場合は冬季の渋滞によるバス遅延が避けられず、バス同士の乗り継ぎを行おうとすると非常に困難が伴うことがいえます。新札幌での乗り継ぎに移行したジェイアールバスにとっても最初のうちは地元新聞に何度も叩かれた末での定着ですし、他社では接続点の発展の問題もあり、多くがうまく行っていないようにも見えます。


郊外バスで以前から行われているのが夕鉄バスの札幌急行線と夕張市内路線バスの接続です。夕張市若菜にある夕鉄バス本社ターミナルで、急行便から本町方面への市内路線バスへ乗り継ぐ場合、通算運賃で利用でき、また、急行便の遅延に対して市内線バスを5分まで待たせる措置が執られています。

夕鉄バス
夕鉄バス時刻表
https://www.yutetsu.co.jp/files/timetable-yubari.pdf


(ただ運賃についての明記がないのは何故だろう?)


本数の多くない夕張の場合、渋滞はあまり考えなくて良く、それほど遅延しないとも思うので「5分」という接続待ち超過時間は妥当と思いますし、問題無いとは思いますが、初めて利用する利用客の場合、不安があるかもしれません。


1970年代からバス同士の接続を行っているのが沿岸バス・道北バスによる旭川-留萌便と留萌-羽幌方面への便です。こちらは留萌駅前-留萌十字街でお互いの便が並行することから多少の遅れを留萌駅前での乗り継ぎで吸収できることもあります。無線で接続相手便を呼び出し発車待ちをかける事も行われており、長くこの体制が取られていることが伺えます。
1往復だけ両線を直通する快速便を運行していますが、直通便でも乗換便でも運賃は変わらない(乗換便で支払う金額と一緒の金額で設定している)ため、利用者としての違和感は少ないものになってます。ただし短距離間で乗り継ぐ場合は運賃が高額になりますがそもそもその様な需要は少ないと踏んでいるようです。
国鉄羽幌線廃線後は支線となった上平-古丹別の乗り継ぎでも同様の無線での接続待ち対応が行われています。運賃も直通便も経由便も同じになっています。(このため古丹別-上平-苫前など初乗り2回となるので古丹別-上平170円、上平-苫前250円のなか、古丹別-苫前は単純に足した420円と高額になっているのは否めない)

沿岸バス
沿岸バス時刻表
http://www.engan-bus.co.jp/10_pdf/timetable/20191001_timetable_localnetwork.pdf



国鉄羽幌線廃止時の反対意見に比較的人口が多く、高校も存在する古丹別地区の支線化を懸念する意見があったものの、このような接続方法で一定の理解を得ているように思います。ただ、現在は本数が減ったこともあり、札幌直通の高速便の接続待ちなどもあり、あまり接続がよくなく、長時間待たされる例も出ていますので必ずしも「乗り継ぎ」で利便を確保できている状態にはなっていないでしょうね。
ただし、こちらも接続を時刻表上で約束してるわけではありませんので、実際に遅れたらどうなんだろう?という事前の情報が欲しいところでもあります。(まぁ、それを約束もまたできないんですが)


最初の高速バス同士の「乗り継ぎ」は会社も別で、余裕時間が少なく乗り継ぎが成功しない可能性が高かったとは思いますが、逆に言えば、地域のバスターミナル、駅との「乗り換え標準時間」を設定し公開しておきたいところだと思います。これによりどうしても間に合わない場合は後続便などへの振替や払い戻しを行えるような措置を行うルール(そのためには当然発車時刻までその申し出を受ける案内窓口、電話対応をできる窓口が必要になりましょうが)を規定するというのを業界内で決められないのかな?とも思うわけです。


最後に接続待ちといえば、JRなど鉄道では駅の接続時間を決めて、接続列車として遅れた場合一定の待ち合わせを行うことを事前に決めています。これが一定の安心につながるわけですが、同様の「接続確約」でバス乗り継ぎ抵抗を抑える方向に行って欲しいな。それは難しいことなんでしょうか。



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