北海道の交通関係


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北海道知事のJR北海道に関する「地元負担」問題と2020年新ダイヤ

2019/12/16

JR北海道の経営問題に関しては、1987年の発足から幾度かの国の支援措置が行われています。基金運用益の下支えとして鉄道・運輸機構へ基金を貸し付ける形で運用益を得る、鉄道・運輸機構の特別債権利益を得る、設備投資助成金を得るなどが行われており、その「結果」を求められるわけですから、要員削減、修繕費削減、設備投資削減を行ったことが、結果的に2011年の石勝線事故、2013年の大沼駅脱線事故などを甚大な事故を引き起こしたという背景を見ることができましょう。
もちろんこれがリンクするわけではありませんが、何かの投資を、融資を受けるならば何らかの結果を返さなければならないこと。「よく見せる」必要があったことも含め、現場の士気低下、今まで大丈夫だったからという事故の芽を摘む努力の欠如などもあったと推測せざるを得ないわけです。当然安全投資が疎かであれば車輌の安全性、線路設備などの安全性にも関わります。

国からの改善命令、監督命令により、「安全最優先」への転換を図ることになり、2014年以降5年にわたる修繕計画、安全投資を行うことになり、結果的に赤字額の拡大ということになったわけですね。

大事なのは、2014年度決算までJR北海道が決算上「黒字」を出していたことです。もちろんこれは鉄道事業が黒字だったわけではなく、基金下支え、そして人件費削減と安全投資負担前ということ、そして北海道新幹線開業前の設備投資によって、翌年度以降は資産計上による帳簿上の負担が増えたこともあり赤字に転落するわけです。しかし、これはその様にちゃんと見せたという面でもあります。まともに安全投資、修繕を行えばこのくらいの金額は簡単にかかりますよということを知らしめようという観点もありましょう。そしてそんな中、当時も今も誰も乗っていない列車が往復し、その線路等設備も修繕が必要なわけです。さらに、利用の多い路線は更なる増発、安定輸送のための投資も必要であるという面もあるわけです。何度も言うように北海道新幹線のうちJR北海道の「持ち物」は車輌や駅設備などに限られ、設備自体は鉄道・運輸機構の持ち物で、リースしている形になり、リース料、修繕費用を支払うスキームですから、北海道新幹線に関わる赤字は既存区間に関しては徐々に減るという意味でもあります。なので単年度赤字を叩いて「不要」という意味はあまりないのですね。

さて、「安全」に経営を振る結果、乗っていない路線でも安全確保のための投資が必要になります。結果JR北海道発表で年間300億円は修正改善しなければならないとしています。その改善の一つの手段が「事業範囲の見直し」で2016年に「当社単独では維持するのが困難な線区」の発表が行われます。利用の少ない路線の維持コストを鉄道会社だけでは負担できないとしたわけです。

2018年に国交省は「事業の適切かつ健全な運営に関する監督命令」を出します。この命令に関しては管理者も何度か記事にしていますが、JR北海道だけでなく「地域」も含めた利用促進やコスト削減の取り組みを実行することを求めているわけです。平成31年度からの2年間は「第1期集中改革期間」なわけで、四半期毎に収支内容を報告しているのはこの命令があるからです。そして国はJR北海道に対して2年間を限度で総額400億円の支援を行っています。この支援は国鉄債務処理に関する債務等処理法に関するものですから2年の時限がある法律でありますので、来年以降新たな枠組みが無ければ支援が行われないということになります。つまり

第1期集中改革期間の成果如何によっては先の支援が得られない


ということをJR北海道も沿線自治体も考えなければならないわけです。このことが道内マスコミもマニアも、知ってかしらずかあまり記事にならない項目で、当然北海道民の多くの方が「知らない」状態な訳です。結果運賃値上げも行われましたし、不動産売却、子会社株売却なども行われましたが、これは諸刃の剣で、一定の収益の期待できる関連事業株を手放せば当然売却以降の配当が無いのですからね。

そして最終的な目標を

2031年度に連結最終利益を黒字化、国の支援無く経営自立


としているわけです。国の皮算用では北海道新幹線札幌開業後は国の関与が無くなる状況になった時点でJR九州同様の株式公開も目指しているものとは思うわけです。

JR北海道の考えている210億円あまりの減収要素(基金運用益減少・新幹線修繕費増加・鉄道利用傾向の減少)について、どう収支改善を図るか。これが
・自助努力
・線区収支改善
・運賃改定
そして
・当社単独では解決が困難な課題の解決
としています。

JR北海道
「JR北海道グループ長期経営ビジョン」等について
https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20190409_KO_plan.pdf



さて、JR北海道が描いていたこの皮算用は、知事の発言でもろくも崩れ去った感があります。

NHK 2019年12月10日
“沿線の負担は利用促進だけに”
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20191210/7000016093.html
>鈴木知事は10日の道議会の特別委員会で、いまの国の支援が終わる再来年度以降について、「欠損補助や老朽化した鉄道施設の更新など、地域に対して負担を求めることは私としては受け入れられるものではない」と述べ、利用促進策のほかには、沿線自治体に負担を求めないという考えを示しました。


北海道新聞 2019年12月11日
地元の負担は利用促進のみ JR問題で鈴木知事
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/373358
>JR北海道の路線見直しを巡り、鈴木直道知事は10日の道議会予算特別委員会で「利用促進以外で地域に負担を求めることは受け入れられない」と述べ、道や市町村がJRの赤字補填(ほてん)や施設更新に財政支援すべきでないとの認識を示した。
 知事が地元負担について考えを示すのは初めて。道は年度末までに持続的な鉄道網確立に関する国への提言をまとめる予定で、同様の考え方を盛り込む見通しだ。知事は「国が中心となり支援策を講じるよう強く求める」と強調した。


この2つの記事しかこの件は配信されませんでしたが、北海道と沿線自治体に対して「地域に対して負担を求めることは私としては受け入れられるものではない」としています。ただ、この「沿線自治体に対して」なのか、「北海道自体が」なのかは記事のニュアンスが少々違う上、知事の定例起者会見では本件は出ていませんので、その真意はわかりません。

しかしながら、北海道知事は「利用促進」は手伝うが「赤字補填」「施設更新」は出さないよという意思を表明したことになります。もちろん北海道も含め沿線自治体の財政事情は厳しく、鉄道に対する支出を簡単に行えない事情がありますが、地域が負担すること無く「国が中心になって支援」というのは、北海道外の多くの地域でも鉄道の運行に関しては一定の支援が行われ、その結果国交省もそれに対して支援するスキームができていますので、国としては「直接的な赤字補助」をJR北海道に行うのはそのスキームを作らない限り難しいし、今まで支援している本州から見ると納得できない国民も多いのではないでしょうか。

そして、「利用促進」に関しても、では、どのような層にどの程度利用して貰うのか?という観点は今まで一切出ていないわけです。利用促進策の数値目標が無い状況で、例えば本年夏のJR割引券添付の冊子によるものはどの程度売れて、どの程度利用があったのか?こういうのも何も出てこない。これではそれが意味があったかどうかすらわからないわけですね。利用促進自体が「うまくいっていない」ことは正直明白ではないかと思うわけです。大事なのは数字的に本当に鉄道利用が増えたのか?です。単独維持困難路線発表後も多くの路線は利用を減らし続けているのが現状なのです。


2020年ダイヤ改正発表

JR北海道は2020年3月14日にダイヤ改正を行うことを発表しました。

JR北海道
2020年3月ダイヤ改正について
https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20191213_KO_kaisei.pdf



さて、先のJR北海道長期経営ビジョンで2020年春ダイヤ改正では札幌-新千歳空港の快速エアポートについて1時間あたり5本の運行を行うことを発表しています。また、H100型の導入を発表しています。民族共生象徴空間「ウポポイ」最寄り駅の白老への特急北斗の停車拡大も発表されています。

これを元に発表を見てみましょう

・新千歳空港輸送・快速エアポート

快速エアポートは毎時5本を運行し32本を増発
増発する快速エアポートのうち4本は新千歳空港・南千歳・新札幌・札幌のみ停車の「特別快速」に
(快速列車の所要時間は札幌-新千歳空港最速37分、ただし日中でも38分、39分の列車が登場)
(特別快速は札幌-新千歳空港最速33分)
(小樽直通便は時間2本のまま変わらず、多少のずれはあるが新千歳空港発6分、30分、札幌発13分、48分、小樽発0分、35分という形)
改正記事内には無いが車内wi-fiは快速エアポート全車で使用可能になる模様。


快速エアポート新旧ダイヤ比較

・函館本線区間快速いしかりライナー廃止

手稲-札幌・札幌-江別を快速運行する区間快速列車は、途中通過駅の利用客が増えているという理由もあり廃止になりました。区間快速列車はその特性上途中駅で普通列車を抜かすことも無く、速達効果はあれど、その分途中駅での乗車機会が減るという面がありました。
特に岩見沢方面においては札幌-岩見沢の特急自由席往復割引きっぷ(Sきっぷ・1,980円)と普通列車(片道970円)往復並みという現象もありますので、これによる不便は最小限ともいえるのかもしれません。
ただ、途中区間までの列車の本数は判りませんが日中を中心に1時間あたり1本減となっており、その分が快速エアポートに振り向けられたという言い方もできるわけですね。


札幌駅発江別方面・手稲方面新旧ダイヤ比較

これは、乗車機会こそ増えますが、一定の等間隔ダイヤ等と一緒に行わなければあまり意味が無く、手放しに喜べない部分もあります。

・その他

特急列車のうち「スーパー」をつけていた「スーパー北斗」「スーパーおおぞら」「スーパーとかち」は各「北斗」「おおぞら」「とかち」とスーパーを外すことになります。

札幌近郊区間の早朝、深夜、夕方時間帯の運行間隔調整、増発、6両編成列車の増加は快速エアポート用の721系が置き換わるまで6両編成車輌の有効活用的な観点があるのかもしれません。

特急北斗号の19本が白老駅に停車。所要時間は一定の本数は延びます。なお、白老停車とならない北斗2号は札幌-函館最速3時間29分を維持しますが、上りも含め軒並み3時間45分程度、4時間に迫る列車があるのは、正直少し不満があるところです。また、一部列車の新幹線との接続時間改善が見られますが、これも、10分程度に短縮できないかとは思うところです。なお、2022年度には札幌-函館の特急北斗号を全てキハ261系に置き換える計画で、車輌性能差が無くなるならば、スピードアップは望めないにせよ一定の等間隔運行、接続改善は期待したいところです。

全便をキハ283系で運行してきた特急おおぞらは今回3往復をキハ261系に置き換えることになります。所要時間の大幅な伸びは見られず、むしろ短縮された列車もありますので、キハ283系の最高速度が制約されている現状が色濃く出ているようにも見えます。キハ283に関しても2022年度あたりが撤退の時期かと思いますが、今回変更の無かった石北線・宗谷線特急に関して(宗谷線にはキハ261系の多目的車も使われるというリリースがあるが石北線には特段の話は無い)も気になるところです。キハ281・283に関しては後期車の体質改善工事が行われており、2年程度で廃車にするのかは若干の疑問があるところです。

函館本線小樽-長万部にはH100形の導入が発表されました。今回15両投入され、キハ201で運行する2往復以外はH100での運行となります。また、線内の半自動ボタン使用が恒常的となることで、客数の少ない、利用の無い駅ではドアが開かないことでの保温対策が行われます。

なお、2019年度から2023年度までH100形一般型気動車とキハ261系特急気動車・多目的車輌合わせて740億円の投資がリリースされており、H100形は2020年度・2021年度までに追加で60両製造というリリースもあります。

今回は駅廃止を道東の根室線古瀬・釧網線南弟子屈2駅に限りましたが、今後は宗谷線方面も含めた更なる廃駅は避けられない状況であります。

なお、現時点で公開されている「特急北斗・すずらん」「特急おおぞら・とかち」「快速エアポート」の時刻を旧ダイヤと対比できる形でExcel化しましたのでご活用ください。
https://traffic.north-tt.com/txt/202003_dia.xlsx

北海道の交通関係 JR北海道 乗車促進運動

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