北海道の交通関係

JR北海道の2021年3月特急を含めた減便と廃駅、そして新駅

2020/10/20

新型コロナウイルス感染症による経済への影響は2月、3月の段階では飲食店であったり、遊戯施設であったりという面が大きく報道されました。そして非常事態宣言にともなって5月の大型連休の旅行、観光への影響が大きく出て、さらに8月のお盆時期には帰省も批判されるなど、その時期時期に各方面に影響があったことは否めません。そして、その長い時期に、常に影響があったのが運輸業界。鉄道やバスの減便も行われましたが、鉄道に関しては車内が密にならぬようと減便、減車は最小限にされ、しかも乗客は半分どころか非常に少なくなり、さらに緊急事態宣言での学校休止による通学定期の払戻、リモート推奨による通勤、出張の削減もあり、運輸業は非常に大きな打撃を受けています。

それは今も完全な形では戻っていません。年間の運輸収入が800億円ほどになるJR北海道は9月までの上半期で昨年比で200億円の減少、このときの会見でも通期で300億円を超える減収を見込まざるを得ないとしています。単純に運行経費は変わらぬまま収入が半分になってしまうということです。


北海道新聞 2020年09月16日
「来春ダイヤ改正、減便・減車も視野」JR北海道・島田社長が会見
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/461036
 8月も鉄道需要の回復が鈍かったことから、島田社長は「本年度中の収入の挽回は困難。コロナ後も鉄道利用が元には戻らないことを視野に入れると、変動費の削減だけでは限界がある」とし、設備やダイヤの見直しを検討する事情を説明。ただ、減便区間については「利用が既にかなり減少した(区間)」とし、具体的な言及を避けた。



島田社長は9月16日の会見で来春のダイヤ改正での減便を示唆しました。

日本経済新聞 2020年09月17日
旅客回復の「起爆剤に」 JR北社長 GoTo東京追加で 一部「減便検討」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO63912140W0A910C2L41000/
島田社長はGo To トラベルで旅客需要がじわり増えているとの見方を示した。対象に東京も入り、新千歳の国内線便数が増えれば、快速エアポートの利用率改善につながるとみていた。
島田社長は2020年度中の鉄道運輸収入の回復は難しいと指摘。新型コロナ収束後も利用回復が望めない路線は減便のほか、列車1編成の車両数を減らす減車や鉄道設備の見直しなどで固定費を減らす考えを示した。



GoToトラベルには批判も多いようですが、今まず利用者を確保しなければ維持すらできないのは観光地もホテルなどの宿泊業も、そしてそこに物品や飲食を納品する様々な業種に影響があります。そこまで裾野の大きいものに個別に支援することは難しい以上、需要喚起で「利用」してもらうのがいちばんなのは言うまでもありません。

ほとんどマスコミ記事にはなっていませんが、10月になった現時点でも高速バスなど都市間バスの減便は続いていて、また、休日ダイヤ等の対応を行い本数を減らすバス会社も少なくない中、JR北海道は一部特急、快速エアポートの減便を解除し現在は通常の運行体制を維持しています。しかし、これも難しくなっているということです。


北海道新聞 2020年10月14日
JR北海道、札幌圏の減便検討 来春のダイヤ改正で
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/470408
地方に多くの不採算路線を抱えるJRにとって、札幌圏は全体の鉄道運輸収入の5割強を占める稼ぎ頭だが、4~9月の線区別収支は前年同期比でほぼ半減した。赤字額は線区別で最大の54億9200万円に上り、利用の多い札幌圏の減便に踏み込んでコスト削減を図る必要があると判断した。


北海道新聞 2020年10月14日
JR全道減便、細る鉄路 コロナ禍で400億円減収 路線見直し議論に波及か
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/470757
 だが、利用客の多い都市圏での減便は副作用も大きい。道央圏の自治体関係者は「減便を進めるのは仕方ないが、なぜ地方の赤字路線を見直さないのか」と、JRが廃止・バス転換方針の5区間のうち、2区間がいまだ合意に至っていないことを問題視。単独維持困難路線の見直しが進まない現状に厳しい目を向ける。


北海道新聞 2020年10月15日
JR北海道が特急減便 来春ダイヤ改正 400億円減収見通し
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/470698
 JR北海道の島田修社長は14日の記者会見で、来春のダイヤ改正に合わせ、札幌―函館間の「北斗」など五つの特急列車で減便し、一部を臨時列車化する方針を明らかにした。普通列車などは札幌圏で1日最大20本程度減らし、地方路線も含め道内全域で減便。コロナ禍の影響でJR単体の2020年度の減収額が前年度比400億円に上るとの見通しも初めて明かし、コスト削減などで50億円規模の収支改善を目指す考えを示した。
 対象となる特急は「北斗」のほか札幌―旭川間の「カムイ」「ライラック」、旭川―稚内間の「サロベツ」、旭川―網走間の「大雪」。「北斗」は1日24本のうち上下最終列車各1本を減便し2本を臨時列車化する。「カムイ」「ライラック」は48本中4本、「サロベツ」は4本中2本、「大雪」は4本すべてを臨時列車化。「北斗」と、札幌―釧路間の「おおぞら」は1~2両減らし、いずれも5両編成とする。
 臨時列車になると、運行についてJRが利用見込みなどに応じて判断し、1~3カ月前に発表する。臨時列車化された特急は年間30日程度から最大230日程度の運休となる見込み。



通期の減収額が400億円ということは、本当に収入の半分が無くなったということです。この状況ではどこが儲かったとか、どの路線はマシだったという議論はほぼ関係ありません。経営安定基金が6800億円で考えても、もし取り崩したとして何年で0になりますか、何年で「全路線を運行できなくなりますか」というレベルだからですね。なので、道央圏の自治体関係者は「減便を進めるのは仕方ないが、なぜ地方の赤字路線を見直さないのか」ってご意見は本当なのか(道新記者が捏造したインタビューを掲載していないか?すら)疑念する内容です。もう、本当に数字的には「詰んだ」状態であることは間違いありません。

JR北海道
来春のダイヤ見直しについて
https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20201014_KO_kaisei.pdf



今回減便・減車の対象になった列車は報道において発表されている限りは以下の通りです。

札幌-東室蘭-函館 特急北斗

定期24本から定期20本臨時2本になります。夜間帯の上下1本で保守間合いの拡大も謳っていますので、函館19:54発の23号、札幌20:00発の24号が対象になりそうに思われます。また、そのほかに1本ずつを年間30日程度運休する臨時列車化としますが、年間30日というと、たとえば日曜日のみとしても50週以上あるので、運休は限られた日数となりそうです。

札幌-旭川 特急ライラック・カムイ

定期48本から定期44本臨時4本になります。こちらは札幌、旭川を30分に発車する列車の一部が臨時化となりそうですが、年間230日というと土曜休日のみ運行という列車になりそうですね。

旭川-北見-網走 特急大雪

札幌-旭川-北見-網走のオホーツク4本はそのままとし、旭川-北見-網走の大雪4本を全て臨時にするとのことで、年間50日程度の運休となると毎週水曜日運休のような形になりそうですね。

旭川-名寄-稚内 特急サロベツ

網走方面同様札幌-旭川-名寄-稚内の宗谷はそのままとし、旭川-名寄-稚内のサロベツ4本のうち2本を定期、2本を臨時で年間30日程度の運休とするようです。年間30日なので、運休日はそう多くは無さそうですが、サロベツは一部通学で使用しているはずなので、どのような運用になるのか気になるところです。
美深駅に停車中のサロベツ1号

札幌圏

10本程度の列車廃止、10本程度の土曜・休日運休を検討するということで、4月-6月の列車縮減時に行われたキハ201系を使用する列車などが対象になりそうに思います。また、土休日はラッシュ時のために回送し運行するような列車を縮減する可能性が高いかなとも思われます。

地方路線

・函館線(滝川-旭川)
留萌線関係での深川-旭川やキハ40による普通列車の一部を減便するように見えます。
・留萌線
今も増毛方面があった頃と同じ3運用を維持していますので、2運用で収まるよう減便すると思われます。
・石北線
区間を切っていませんので、旭川-上川だけでなく、白滝-網走にも減便が出るようです。特に夜間の通学からも外れるような列車が対象でしょうか。
・宗谷線(旭川-名寄)
H100型の置き換えもあり、キハ54と運用を分けると思いますので、その絡みもありましょうか。
・根室線(滝川-新得)
ここも4運用ていどあるので1運用減を考えていると思われます。将来的には富良野線との車両共用化となりそうですがどうでしょう。
・根室線(新得-帯広)
あくまで個人的に運用数が多くもったいなく感じる(滝川方に行かなくなっても原則的にその運用が生きている)面を改善することで逆に使いやすくなって欲しいとも思います。

減車

特急おおぞらと特急北斗を原則5両で随時増結する形にします。これで、多くの特急が4両または5両に統一されることになります。

廃駅

プレスリリースでは18駅程度としています。

しかし、これで得られる縮減される経費は年5.5億円で減収に対しての効果は低いものです。それは現実的に鉄道を動かす人が減るわけでも無ければ、線路整備などの経費は本数が減っても、極端言えば列車1本しか走らなくても減らすことは難しいのです。廃止になりましたが札沼線の1往復運行区間でも踏切を整備し、除雪をし、各駅の整備をしなければならないのです。真夜中でもこうこうと踏切には灯りが点るのです。一切夜に運行されないにしてもです。


さて、この減便に対しての反応ですが、特に地方面での記事を見てみます。

北海道新聞 留萌・宗谷面 2020年10月16日
「サロベツ」臨時化に懸念 JR特急減便 道北反応 国の観光支援策に逆行、の声 目立つ空席、容認も
(WEB配信無し)


北海道新聞 オホーツク面 2020年10月17日
石北線減便に地元困惑 仕事、観光への打撃懸念
(WEB配信無し)


北海道新聞 小樽・後志面 2020年10月15日
JRが札幌圏の減便検討 観光客減、追い打ち懸念
(WEB配信無し)



ただ、地元もこの現状で批判だけしても未来は無いわけですね。

北海道新聞 2020年10月16日
社説)JR減便 縮小の悪循環が心配だ
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/471204
 JR北海道が来春のダイヤ改正で、特急列車や札幌圏の普通列車などについて減便や編成車両数を減らす方針を決めた。
 新型コロナ禍による旅客激減で、2021年3月期の売上高が前期に比べ400億円も減少し、半減する見通しとなったためだ。
 島田修社長は会見でコロナ以前の規模と比べ「7割経済が続く」と述べ、経費節減のため、一時的な減便ではないことを強調した。
 厳しい経営環境を考えれば、やむを得ない側面もある。だが、利用客への影響は小さくない。
 ダイヤ改正が一層のJR離れを招き、さらなる減便や路線廃止につながる悪循環も懸念される。
 鉄道は地域全体の財産だ。国や道などが主導して、次代にどう残していくのか、根本的に考える時期がきている。
 計画では「北斗」など五つの特急で定期便を1日計80本から66本に減らし、新たに12本を臨時便として運行する。「おおぞら」など二つの特急は車両を減らす。
 気になるのは、これまで順調だった札幌圏にも切り込むことだ。普通列車などの減便は最大20本程度で、新千歳空港を結ぶ快速エアポートも検討対象という。
 JRは31年度までの長期ビジョンで、札幌圏の通勤通学客と新千歳利用のインバウンド(訪日観光客)を旅客の中核に置いていた。
 これを事実上修正することになりはしないか。だとしたら再生に向けた前提条件が崩れる。
 本数は未定ながら、地方路線も留萌線や石北線など6区間で減便する。もともと少ない本数がさらに減り、利便性は損なわれる。
 JRは4年前に「単独では維持困難」な赤字13区間を公表した。5区間は廃止・バス転換の方針だが、このうち留萌線など2区間は地元合意が得られていない。
 札幌圏ですら減便されることで、廃線圧力は強まりそうだ。なし崩しで廃止されるとの疑念が起きる可能性もある。
 国は19年度からJR北海道に年約200億円の支援を行ってきた。根拠法の期限は本年度末だ。法改正による継続が焦点になる。
 だが、小出しの財政支援に終始するのではなく、将来的な地域の鉄道像を描いたうえで財政スキームを考えるべきだ。
 インバウンド回復が見込めない中、鉄路再生は地域の支えなくしては成り立たない。自治体だけでなく企業や学校なども巻き込んだ利用促進への議論を深めたい。道はこれらを主導する責務がある。



道新は強い言葉で減便を批判しました。札幌圏が「順調」では無い状況に陥ってるのに何を見ているのかわかりませんが、札幌だけ生き残ればそれでいいという観点を隠そうともしないのは、札幌新聞ではないのでちょっと自重されたい。


駅廃止と新駅

JR北海道が18駅程度とした駅廃止ですが、過去の報道からは以下の駅が対象のようです。
・宗谷線(11駅)
南比布
北比布
東六線
北剣淵
下士別
北星
南美深
紋穂内
豊清水
安牛
上幌延
(恩根内は当初受諾も住民反対で存続に、抜海は市と住民が合意しておらず2021年廃止は無いものと思われます)

・石北線
東雲
(今のところ他の駅は容認の話はない)

・釧網線
南斜里
(今のところ他の駅は容認の話はない)

これで13駅ですので、あと5駅程度、地域で話が進んでいるのか、宗谷線、石北線で、さらに話があるのかが気になるところですが、18駅と銘打っている以上、あるていど確約されているのでしょう。

駅廃止予定の北剣淵駅。平日ですが自転車1台駐輪もなく、利用が無いことが伺えます。

学園都市線のあいの里公園-石狩太美間には新駅の構想が出ました。

北海道新聞 2020年10月15日
新駅拠点に「まちの顔づくり」 当別町が住民説明会 町長「全町に経済効果波及」
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/471018
新駅予定地は札沼線あいの里公園駅―石狩太美駅間の当別太(とうべつぶと)でJR札幌駅から約20キロ。JRは2022年4月開業を目指す。ホームは長さ135メートルで6両編成の列車が停車できる。
 町などによると、ホームと駅舎建設の概算事業費は8億~9億円の見通し。維持費はJRが基本的に負担し、同規模の駅だと年500万~600万円という。駅前には51台分の駐車場や駐輪場、ロータリーなどを設ける予定。
 町は14日夜、太美町の西当別コミュニティセンターで住民説明会を開き、住民約60人に対し、新駅についての基本情報を紹介した。さらに、ロイズ側が新駅開設に合わせ、ふと美工場に見学やチョコレート作りの体験スペースなどを新たに設け、集客機能強化を目指していることも説明。町は、新駅とふと美工場を結ぶ自動走行バスなど高速通信網を生かした新たなシステム構築や、観光農園の誘致などを通じて人口増を狙っているとした。



ロイズふと美工場と駅設置予定の15線道路踏切。背後にロイズ工場が見える。

駅は請願駅で駅近くで工場、直営店を展開する菓子製造業のロイズと当別町が費用を負担することになります。JRも駅設置も駅維持も費用があれば一定の要望には応えるわけで、本来は利用が見込めそうな、住民や企業に利便がある駅は設置していく方が良いとも思います。地方でも東風連駅を名寄高校近くに移転する計画が進んでいるのもありますね。

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